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暗影
これでいい……私は間違っていない。今は逃げる事が正しいんだ。でも、私には“力”がある。あの時とは違う。力があるのに何もしないなんて私は、私は嫌。
それでも、力を使う度に突き付けられる。所詮私は皆と違うんだって……。私はどうすれば良い……?


計三日開催される魔術対抗試合も最終日を迎えていた。
既に七月も半ばに入っているのだが、所謂夏休み前のテストとイベントを兼ねるのがこの魔術対抗試合だ。
学園が存在するラクレイン王国、王都アージェンスタインの四季は比較的はっきりしている。しかし夏だけは少し蒸し暑い程度で、ほぼ春と変わらない。

思えば嫌な感じがする日だった。言い知れぬ不安。或いは虫の知らせ。

「……フィア、今日は変に蒸し暑くない? 何か嫌な空気って言ったらいいのかな……すごく不安になる」

言葉にして言い表せない何かが確かにあった。天気が悪い訳では無い。雲一つない快晴だ。それは違和感。敢えて言うならば暗鬱な空気、といった所だろう。

「んーそうかな? 私には分からないや。そんな事よりアリア。今日は頑張ろうね」

「はいはい。フィアってば昨日からすごく楽しみにしてたでしょ」

昨日のフィアのはしゃぎようと来たら本当に凄かった。思い出しながらアリアは、苦笑を漏らした。フィアナは自分の実力を良く分かっている。強く、もっと強く。より高みを目指す彼女の貪欲とも思える向上心は驚嘆に値するだろう。



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あきゅろす。
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