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焔の鬣持つ獅子
「……はい。では今日はここまでにしましょうか。まだ少し時間が残って居ますが、皆さんの今後の為に先輩方の見学に行きましょう。ちょうど召喚魔術の実習を行っているようですし」

ここで待ってましたの一言。こっそりと教室内を見渡すと、机に突っ伏して寝ている者や明らかに上の空な者もいる。見学でも何でも復習を聞かされるよりは何倍も良い。

実習用の教室に入った時、アリアは微かな違和感を感じた。しかしその違和感の正体は分からない。

実習に使われる教室は、魔術や魔力の暴走に備え強固な防護魔術が施されている。それに加え、窓も無いため人によっては窮屈に思えるかもしれない。

「……次、レヴィウス・フォン・セレスタイン」

「セレスタイン先輩だね」と隣のフィアナ。

鮮やかな朱の髪が揺れる。レヴィウスは二人に気付いたようで、小さく手を振った。

『我が術と魔力をもって此処に願う……』

形の良い朱唇から零れ出る精霊の詩に導かれ、徐々に魔法陣が構築されてゆく。

『開け、幻界への門。我が喚び声に応えよ。汝、其の身に眠れる力秘めし緋を司るものよ……。今こそ其の姿を我が前に示せ……出でよ、勇敢なる獅子、マンティコア』

詠唱の完成と同時に真紅の魔法陣がまばゆく輝いた。
燃えるような緋色の鬣に深い琥珀色の双眸を持つ獅子に似た獣。それがマンティコアだ。しかしマンティコアの背には獅子には無い一対の蝙蝠の翼があった。

「すごい……」

周りから感嘆の声が上がる。先も述べたように召喚魔術は最も才能が必要とされる魔術で、割合としては当然失敗の場合が多い。

何故なら召喚魔術とは召喚対象の許しを得て初めて行使が可能になる。
強制では無く、乞い願うと言った方が正しい。

召喚された対象の肉体は精霊因子で再構成した仮初めの器に過ぎない。もちろん対象その者を具現化する事も可能だが、より綿密な精霊因子の構成と魔力維持が必要なため滅多に行わない。と言うより出来ないのだ。


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