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ルーファス
大体分かっているとミシェルは言った。この二人にはやはりお見通しなのかもしれない。
気付かれないよう万全をきしていたが、彼らはそもそも『人』ではないのだ。

言い逃れを出来るとは思えないし、しようとも思わない。
小さく息を吐いたラグナは観念して口を開いた。

「……アスタロトの契約者と戦います。クリス様の呪いを解くために」

いくら異端である――契約者と戦うと言っても悪魔祓い、異端審問官として命令を受けているわけでは当然ない。
これはラグナの独断だ。

勝てるかどうかも、生き残れるかどうかさえ分からない。ラグナと言えど、大悪魔と契約した者と相対したことはないからだ。

アスタロトとはリフィリアで一度、戦っているが直接刃を交えた訳ではないし、あの時の彼は本来の力を出していなかった。
つまり、あてにはならない。

限りなく死に近い戦いに臨むなど、馬鹿のすることなのだろう。
実際、以前のラグナならそんな真似はしなかった。

「やはりそうでしたか。私たちに貴方を止めるいわれはありません。ですが約束して下さい。必ず無事で帰ってくると。私もラファエルも貴方を失いたくないのです」

ミシェルやラファエルがラグナに向ける瞳は、司教に向けるものとは違う。そう、言うならば親しい友人に向けるようなものだった。
二人の普段とはどこか違う態度にラグナは戸惑い、言葉を返すことが出来なかった。

「私たちは貴方の助けにはなれません。ですから……」

ラファエルは背後から現れた人物に声を掛ける。それは二十代前半から半ばほどの青年だった。
優しげな美貌を持つ彼は、長い銀色の髪をうなじ辺りで纏め、背中に流している。

真っ直ぐにラグナを見つめる瞳は菫色で、悪魔祓いの証である銀糸の刺繍が施された黒の聖衣を身につけていた。

「お前……」

ラグナが驚愕に目を見開く。目の前に現れたのは、ラグナの見知った人物だったから。
とは言え、彼を見るのは二年、いや、一年ぶりだろうか。それは彼が長らくシェイアードを離れていたからだ。

「久しぶり。一年半ぶりだったかな、ハロルド?」

「この馬鹿ルファ! 何もこんな時に……」

にっこりと笑う彼に対し、ラグナは複雑な、何とも言えない表情で頭を押さえた。彼の名はルーファス・マクレイン。ハロルドと同じ異端審問官である。



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あきゅろす。
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