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只一つ望んだもの
かつて女神は混沌の海より世界を創造した。

神は全ての祖となる精霊因子から空、大地、海を創り、月と太陽と星を浮かべた。そして獣が生まれ、人が生まれた。

僅か七日で創世を終えた女神は、最後に世界を創造して尚余りある秩序と混沌の力を聖なる柩に封じた。けして解けぬ戒めと共に。
そうして作られた大地はこう呼ばれた。女神と精霊に祝福されし世界シルヴァニス、と。
――エルヴァ創世記 第一章一節『祝福されし地、シルヴァニス』より。


望むものは只一つだけ。それだけだった。彼が居れば他に何も要らなかった。只それだけなのに。そのたった一つは永遠に喪われてしまった。
彼を殺した世界を、魔術を、人を彼女は許しはしない。だからこそ彼女は黄金の暁を作った。世界に、そして人にその罪を贖わせる為に。

『ねぇ、今の私を見て貴方はどう思うかしら? きっと怒るわね。何馬鹿な事をしているのかって。それでも私は……』

かつて英雄と謳われた魔導師――リデル・メイザースは自嘲した。自分は命尽きてもきっと彼と同じ場所にはいけないだろう。
だが立ち止まる訳には行かない。彼の墓標にそう誓ったのだから。


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