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フィン・ジェオード
「君は簡易結界を張ってくれたんですね? 確かに、あれなら悪魔でも迂闊に手は出せない」

笑みを浮かべたまま、さらりと言ってのけるフィンにラグナは頷きながらも内心、舌を巻いていた。彼はこの医務室からラグナの魔力と聖気を感知したのだ。

普段は妻でありマイスター、《金紅石》のルチルの影に隠れているが、フィンもその容姿に似合わず大魔導師と呼ばれる人物である。性格と魔法医療師と言う肩書きから、つい忘れそうにはなるが。
彼もまたクリス同様、長い時を生きている。

「ですがあくまで気休めです。流石に学園全体に結界を張る訳には行きませんし」

本格的に儀式を行なった結界ではないため、強度はそれほど高くない。聖人の力を織り込んであることから悪魔には有効だが、裏を返せば悪魔にしか効果がないということだ。

大掛かりな対悪魔結界を張るにはそれなりの準備がいるし、手間もかかる。
何よりクリスが望まないだろう。

「クリス様は目を覚まされました?」

「ええ、つい先ほど。ですがまたお眠りになりました。後をお願いしてよろしいでしょうか、フィン先生?」

フィンが学園に招かれたのはクリスの体調管理という意味合いが大きい。講師としての仕事もあるが、それはあくまでカモフラージュである。

勿論、彼が優秀な魔法医療師であることは確かなので、魔法医療師を目指す生徒たちにとっては良い勉強になるだろうが。

「うん、任せてください。君は安心して戻って。何かあれば僕やシュタイナー先生がクリス様を守るから」

「お願いします」

本当ならラグナがクリスの傍にいるのが一番だ。しかし悪魔祓いであり、異端審問官である彼は多忙を極める。
ここで普段とは違う動きをすれば、聡いアルノルドに気づかれる可能性があるのだ。

「……何かあればコネクト・ジュエルに連絡を」

「ええ、すぐにでも。君も気をつけて」

ラグナはそう言って片方の耳につけた月長石の耳飾りを指差した。
それはただの装飾品ではなく、登録さえすれば離れた場所からでも連絡が取れる魔具、コネクト・ジュエルである。

フィンが持つ腕輪も魔力の制御装置を兼ねたコネクト・ジュエルとなっている。何かあれば直ぐに連絡が取れるのだ。

「それではまた後ほど」

言うなり白い長衣を翻し、ラグナは医務室を出た。アレイスターにクリスの伝言を伝えるために。



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あきゅろす。
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