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万全な状態で
ラグナは意識を失っているクリスのそばについていた。目を閉じた彼は静かな寝息を立てている。クリスの言う通り、咎の烙印から魔力を辿ることは出来た。契約者の大体の居場所も分かったが、焦ってはならない。

万全の準備で挑まなければ。相手は契約者。人を超えたもの。大悪魔アスタロトを相手にすると同意義なのだ。
いくらラグナとクリスと言えど、苦しい戦いとなるだろう。

『一度、ルチルにバクルスの調整も頼まなきゃな』

ラグナは思案しながら首から下げている銀の十字架に触れる。バクルスは文字通り、ラグナら悪魔祓いの命だ。
これがなければ人を脅かす悪魔たちとまともにやり合うことも出来ない。

異端審問官たるラグナのバクルスはミスリルで作られ、剣や槍と言った武器を記憶する能力がある。
しかし契約者と戦うには今一度、魔具職人の手によって調整してもらう必要があるだろう。

自分たちが出来る最大限の準備をして契約者に挑む。それでもアスタロトが現れれば困難な戦いとなるだろう。
クリスが万全なら話は違っただろうが、今の彼の体は激しい戦闘に耐えられないのだ。

「ん……」

僅かな身動ぎの後、クリスの瞼が開き、美しい赤と蒼の瞳が露になる。
この短時間で目覚めることが出来たのは、当代最強と謳われる彼だからこそだろう。

魔力の糸を辿ることはクリスの体にかなりの負担を掛けた。正直、かなり辛いはずだ。

「お加減は如何ですか? フィン先生を呼んで来ましょうか?」

「大丈夫。眠ってマシになったから。けどもう少し眠らせてもらうよ。すまないが、アレイスターに午後からの仕事を頼むよう、言ってくれるかな。動けないんだ」

ふう、と息を吐いたクリスは左腕を顔に乗せ、困ったように笑った。アレイスターへの連絡ならコネクト・ジュエルを使えばいいのだが、生憎今は授業中。

「分かりました。ですがあまりご無理はなさらないよう。結界でも張っておきますか?」

魔力を辿る時、痕跡は完全に消した。だが絶対なんてこの世にはあり得ない。
アスタロトが感知する可能性だってある。

学園自体にも強力な結界が張られているとは言え、対悪魔結界ではない上に、眠っている間クリスは無防備になる。
念には念を入れた方がいいだろう。

「では頼むよ、ラグナ君」

言うなりクリスは目を閉じる。頷いたラグナは早速、簡易結界の形成に取りかかった。



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