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魂を売った者の末路
愛しい人。何よりも大切な存在。男は彼女を取り戻すために大悪魔と契約した。大悪魔は言う。男の慟哭が自分を呼び寄せたのだと。
彼女を取り戻せるなら何だってよかった。神でも悪魔でも。

だが大悪魔アスタロトの力を持ってしても死者を蘇らせることは出来なかった。何故なら彼女――リアの魂は女神の御元にいるから。
転生の準備に入っているのだとアスタロトは言う。
流石の大悪魔も、天使たちの領域には手を出せないらしい。

しかし男は何一つ後悔していなかった。悪魔と契約したことも、彼女を取り戻したいと願ったことも。全て自分が思い、願ったこと。
命を削ってまでも叶えたい願いがあった。否、自分の命を引き換えにしてもいい。それほどまでに彼女は男の全てだった。

どれほど焦がれ、願ったことだろう。彼女をこの手に取り戻したいと。そのためなら世界の理さえ歪めてもいい。
だが叶わないなら復讐してやる。女神の使徒ども。

大悪魔アスタロト。紫の髪にアメジストの瞳。外見はとんでもなく美しい青年だった。だがその美しさは清らかさを感じさせるものではなく、毒を秘めたような妖しい、しかし目を引き付つけて止まない美貌。その唇は紅も引いていないのに赤く艶やかであり、一点の染みもない肌は雪のように白い。

同性でさえ、アスタロトの魅力には抗えないだろう。
背に生えるのは闇を集めたような六枚の翼。背徳の証であり、アスタロトの姿をより一層引き立てている。黒い翼を背に、空中で足を組み、不敵に笑うさまはまさに人を惑わす悪魔だった。

『復讐? 退屈しなくていいね。ボクも女神の使徒どもは大嫌いだから協力してあげるよ。ただし、あんまりさっさとくたばらないこと。ボク、退屈も嫌いだけど、脆いのはもっと嫌いなんだよね。遊びがいないし』

自らの思いを打ち明けるとアスタロトはそう言って笑った。子供のように無邪気に、だが信じられないほど艶やかに。
しかしその彼もリフィリアの一件以来、音沙汰がない。呼びかけてみても返事はなかった。

だが例え、アスタロトの助力がなくても復讐を果たしてみせる。どうせ残り少ない命だ。どう使うかは自分の自由。
彼女の魂と寄り添うことが出来なくても、二度と彼女の笑顔を見ることが叶わなくても。

それは悪魔に魂を売り、憎しみのままに復讐を果たそうとする罰だ。不気味に脈動する腕と瞳を抑えながら男は笑う。

「これが悪魔に魂を売った者の末路、か……」



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