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月明かりの下で
どうして私だけ助かったの? 嬉しくなんてない。残ったのは喪失感だけ。

逸そ私も消えれば良かったんだ! 皆が居ないこの世界に意味なんて無い……何故なの!? この世界にカミサマが居ると言うのなら答えてよ!
力なんて要らない! 何故、どうして私でなければ成らなかったの!


「止めてっ!」

短い悲痛な声を上げ、アリアは飛び起きた。
まだ朝では無い。カーテンの隙間から覗く漆黒の闇と、零れ落ちる月の光が夜だという事を教えてくれる。

今の声で同室のフィアが起きたのでは無いかと身を堅くしたが、杞憂に終わったようだ。
彼女は安らかに寝息を立てている。

「……嫌な夢」

ぽつりとアリアは呟く。見れば着ている服は汗でベトベトしているし、嫌な夢も相俟って気分は最悪だ。
流石にベトベトした服をそのまま着ている訳にも行かず、クローゼットから服を取り出し、手早く着替えた。
だがもう一度眠る気には成らない。寝直そうにも目が覚めきっている事もあるが。
アリアはフィアナを起こさないように細心の注意を払い旋律を紡ぐ。

『我にして我に非ざる者、我が幻影よ……喚び声に応え、その姿を表せ。汝、見る者を惑わす合わせ鏡。翻弄せよ、ファントム・リアライズ』

アリアの詠唱に応えた精霊因子は、先程まで彼女が寝ていたベッドに集束する。淡い光と共に現れたのは、ベッドで眠るアリア自身の姿。自分に似せて作った幻に過ぎないがこれで十分だろう。

もしフィアが起きても簡単には幻だとは分からない。フィアは意外と真面目で、部屋を抜け出した事がバレると色々と面倒な事になりそうだからだ。
アリアはまだ彼女が寝ている事を確認し、静かに部屋を出た。



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