躊躇った理由
ざわめくアリアらのクラスメートを無視してレヴィウスたちは学食へ寄り、屋上に向かった。
クリスとの大体の打ち合わせは済んでいる。
後はアリアにあらましを説明し、マリウスたちにシェイトのことを話して協力してもらうだけだ。
少し骨が折れるかもしれないが、この辺は我慢しよう。
布石は既に敷いてあるのだ。
「で、どこから説明しようか?」
昼食を広げながらレヴィウスは足を投げ出し空を仰いだ。
どう見てもこの国最大の貴族の子息には見えないが、そこが彼らしいと言えば彼らしい。
「まず、オークス先輩の休学の理由は?」
とフィアナは休学とはただ事ではない。しかも無期限だという。
普通なら考えられない事態だ。その上理由すら分からないのも明らかにおかしい。
フィアナはサンドイッチを頬ばりながらレヴィウスを見る。
アリアとマリウスはそれを黙って見つめていた。
「それを話すならまず、シェイトの素性を話さなきゃならない」
「私がフィアたちに話せなかった理由がそれなの。でも、隠したままは嫌だから」
シェイトがオズワルドの息子、つまりは四大公爵家の一つクロイツェル公爵家の血を引くことは簡単に口にすることではない。
だがアリアの親友であるフィアナとマリウスになら話してもいいだろう。
「……シェイトは四大公爵家の一つ、クロイツェル公爵家の現当主――オズワルドの息子だ」
「クロイツェル……公爵家の、ですか?」
マリウスはどうにか聞き返したが、フィアナは驚きのあまり言葉を返せずにいた。
彼女の紫水晶を思わせる瞳は大きく見開かれている。
クロイツェル公爵の息子。それが何を意味するか分からぬ二人ではない。
アリアが話すことを躊躇っていた理由も分かる。
オズワルドの息子はレナート・フォン・クロイツェルだだ一人のはず。
「そ。ただし正式な、じゃない。公爵はあいつを死んだと思ってたみたいだけど、学園祭で見かけたみたいでさ、迎えに来たんだよ」
オズワルドがシェイトを死んだと思っていた理由。それはディヴァイン・クロウによるものだ。
何せ、生存者は皆無だと言われるのだから。
シェイトはディヴァイン・クロウが発動した時、既に街の外に出ていたため無事だったようだが、混乱の中では死んだと思われても仕方がないだろう。
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