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ナイスタイミング
やはりアリアの様子はどこかおかしかった。レヴィウスの謹慎中も。どうやら二人で学園長室に行ったところで何かあったらしいが、クラスメートに尋ねられてもアリアは困ったように笑うだけだった。
四限目を終えたフィアナは遂に耐え切れず、アリアに話し掛けた。

「ねえ、アリア。この間は話さなくていいって言ったけど、何があったの? 顔色悪いよ?」

フィアナはアリアが話したくなければいいと思っていた。だが過去のことも今回だって彼女が苦しんでいるというのに何も出来ない。
親友なのに。本当に親友だと言えるのか。

「そうですよ。ちゃんと休んでますか? 僕たちでは力になれないかもしれません。ですが話すだけでも楽になりますよ。今の貴女は正直、見ていられません。僕もフィアも」

エメラルドを思わせる瞳に憂いを含ませ、マリウスはアリアを見た。ここ数日、彼女は無理をして普段通りに振る舞っている。
アリアが抱える苦しみを全て理解することはきっと不可能なのだろう。

だが誰かに話すだけで気持ちが違う。マリウスはフィアナが居てくれたからどうにかなった。父と和解することが出来た。

「フィア、マリウス……」

二人がどれほど心配してくれているかが伝わって来る。申し訳なくて仕方がなかった。
心配を掛けないよう普段通りに振る舞っていたつもりなのに。

二人に心配をかけないように、そうアリアは思っていたが、それは裏を返せば二人を信頼していないということではないのか。
勿論、そんなつもりはない。だが同じことだったかもしれないのだ。

「……心配かけてごめんなさい。ちゃんと話すから。シェイト先輩のことも」

レヴィウスだってきっと分かってくれる。最後に会った時、彼は言っていた二日後のお楽しみだと。
しかし流石に教室では話せない。人目に付かない場所、例えば屋上などだ。

「うん、待ってました。じゃ、屋上でいいんじゃない。聞かれてもまずいしね」

「ちょうどお昼だし、何か買っていこうか」

しかしその点は二人も分かっているらしい。さりげなく屋上と言ってくれた。そんな些細な気遣いが堪らなく嬉しい。
とその時、嫌に廊下の方がざわついた。

がらり、と扉が開く音がして誰かが入ってくる。やや着崩した制服に、朱色の髪と空色の瞳。
レヴィウスその人である。視界にフィアナとマリウスの姿を認めた彼は、にやりと微笑んだ。

「やっほー。俺ってばナイスタイミング?」



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