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全て覚悟で選んだこと
謹慎が明けたレヴィウスは真っ先に学園長室を尋ねていた。返事を待つ時間すら間ももどかしい。
入室の許可を受けると同時に扉を開け、クリスの元へ歩み寄る。

「申し訳ありませんでした」

真っ直ぐにクリスを見つめ、深く頭を下げた。何故気付けなかったのだろう。彼の顔色が悪いことは一見すれば分かる。

だが当のクリスは訳が分からないのかきょとんとしていた。
レヴィウスは三日前の自分を恥じるように言葉を纏める。

「俺は何も分かっていなかった。貴方のこともシェイトのことも。アリアちゃんから聞きました」

あるいはもっと冷静で居られたらクリスの異変に気付けただろうか。情けないと思う反面、苛立ちを感じていた。
そんなレヴィウスに対して、クリスは困ったように微笑んだ。まるで悪戯がばれた子供のように無邪気に。

「そう。本当なら君達の記憶を消した方が賢明なのかもしれない。だけど僕はそんな不誠実なことはしたくないんだ」

アリアは優しい子だ。きっと耐えられずに言ってしまったのだろう。
クリスはそれを責めるつもりはないし、むしろ彼女らしいと思う。

本当に知られたくないのなら、魔術を使ってでも記憶を消すべきなのだろう。
だがそれは自分を案じてくれる彼女らを裏切ることになる。
甘いと言われようが何と言われようがクリスには出来なかった。

「学園長……」

「君が謝ることはないんだ。全てを背負うと決めた上で僕が選んだことだから」

それでも己を責めるレヴィウスにクリスは言った。どこまでも彼を案じるように優しく。全て自分の読みが甘かっただけのこと。
クリス自身が招いた事だ。責めも全て自分が負う。

「体の方は……」

「今は大丈夫。ハロルド君に進行を止めてもらったから」

今なら躊躇うことは何も無い。体を騙しているような状態とは言え、全力を出す事が出来るのだから。
自分のことなど気にするな、クリスはそう言っているように聞こえた。

クリスが大丈夫だと言う以上、彼だけに話さない訳にはいかない。
頷いたレヴィウスはふっきれたような顔になる。

「分かりました。なら何も言いません。ではシェイトを取り戻す算段と行きましょう」

自分でも悪役の台詞だと思いつつ、レヴィウスは不敵に微笑んだ。オズワルドの顔を思い浮かべて。



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