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よく喋る青年
「クロイツェル家のご子息が私に何のようです?」

動揺を抑え、シェイトはレナートを見上げた。
口調自体は丁寧だが、シェイトがレナートを見る瞳は冷たい。星を思わせる銀色の瞳には拒絶の色が浮かんでいる。自分がここに来たのは異母兄弟と仲良くするためではないのだ。

そんな彼に対し、レナートは折角の美人なのに残念、と呟いた。
その声は普通なら聞き取れないほどだったが、しっかりとシェイトの耳に届き、更に彼をむっとさせた。

「……聞こえていますよ。それで用件はなんでしょうか?」

「あの人がさ、あんたを夜会に連れてけって言うから迎えに来た。今回は別に壁の花で問題ないってよ」

明らかに嫌々といった表情をするシェイトにレナートも若干低い声音で答える。そもそも彼は自分との関係を知っているのだろうか。
それにあの人というのは誰のことなのか。

「あ、あの人ってのはオレの父親のことな。にしてもあんたも大変だよな、シェイト。地方貴族の出身なのに公爵家の血を引いてるんだって?」

そう言ってレナートは聞いてもいないことを喋り始める。シェイトは黙って彼の言葉に耳を傾けることにした。
どうやらオズワルドはシェイトの出自を地方貴族としているようだ。

適当に相槌を打ちながら、レナートから話を聞き出して行く。オズワルドの真意は知れないが、少なくても彼からは悪意や作為は感じられない。
これでもシェイトは人を見る目はあると自負している。

「……歳は確か十七か。夜会に出るには少し遅いが、まあ、問題ないか。本当なら、わざわざオレが迎えに来るほどのことでもないし、普通逆だろうな。歳が近いから行けって公爵命令出されてさ。ん、よく喋ると思ってるだろ? 口から生まれたって言われるくらいだし。これでもご婦人方やお嬢様方に人気あるんだな、これが」

本当に何というか、よくここまで舌が回るものだ。シェイトは呆れ半分、尊敬半分に彼の話を聞いていた。見た目は女性顔負けの美貌を持つは青年だが、喋るとまた雰囲気が変わる。
だが正直、相槌を打つのさえ面倒になって来た。

というか誰かこの人を止めて欲しい。自分と異母兄弟だとは到底信じられなかった。
レナートがいうことは半分ほどは無駄な話であって、その全てを聞いていたらきりがない。



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