それ相応の理由
シェイトは何故、オズワルドの元へ行ったのか。彼が自分やアリアに何も言わずに学園を去るなんて有り得ない。
少なくてもレヴィウスの知るシェイトはそうだ。
「……アリアちゃん。シェイトがどうして公爵の元へ行ったのか、知ってるよね?」
その言葉は自然とレヴィウスの口をついて出た。理由を知っているからこそ、彼女は自分のところに来たのではないのか。
じっとアリアの真紅の瞳を見つめる。
すると彼女はいたたまれないように目を伏せた。
「それは……」
レヴィウスのいう通り、アリアは知っている。だがクリスと約束したのだ。彼が呪いに侵されていることは誰にも言わないと。
しかしレヴィウスの表情は真剣そのもので嘘をつくことなど出来るはずもない。
「頼む。学園長が動かなかったのもおかしい。あの人なら何もしないはずないのに」
クリスは黙ってシェイトをオズワルドの元へ行かせるような人間ではない。ならばそれ相応の理由があるのだ。
クリスでさえ動けない。
「……本当は話さないと約束したことです。でも、それじゃあきっと何も解決しない」
目を伏せたまま、アリアはゆっくりと語り出した。クリスと約束はした。だが本当にそれでいいのだろうか。このままではクリスの命が危ない。
いくら彼が当代最強と謳われる魔導師であっても、クリスの衰弱ぶりを見せられてはとても大丈夫だとは思えなかった。
アリアは心の中でクリスに謝った。すみません。約束、破ります。
「……学園長は呪いに侵されているんです。咎の烙印だと聞きました」
「咎の……烙印!?」
貴族であり魔導師であるレヴィウスは呪いについて一般の魔導師以上の知識を持っている。
咎の烙印は高位の悪魔が用いる死の呪い。例え聖人の浄化の奇跡でも浄化出来ず、呪いを解くには悪魔か、契約しているのならその契約者を滅っさなければならない。
頭の中の知識はそう告げていた。
だがそれがどんなに困難なことか。悪魔の力を得た契約者は既に人を越え、高位の悪魔となればその力は強大。どちらとも、聖人でもないただの人間が対抗出来るはずがない。
クリスが強いのは十分知っている。しかし高位を悪魔を滅っすることなど出来るのだろうか。
「リフィリアの一件で学園長は私と……先輩を庇って呪いを受けたんです。学園長は先輩が学園を去ったのは恐らく、公爵がその事実を先輩に告げたからだと」
彼はきっとクリスの足手まといになることを恐れ、学園を去ったのだ。シェイトなら考えそうなこと。
何故、分からなかったのだ。だからクリスは責めるレヴィウスに何も言わなかった。わざと殴られたのだ。
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