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何かがおかしい
目覚めたアリアは着替えと朝食を済まし、女子寮を出る。フィアナには先生に体調不良だと伝えて貰うことになっていた。
理由は言わなかったが、彼女は二つ返事で了承してくれたのだ。

登校時間を過ぎだこともあり、人通りは少ないため好都合である。向かう先は勿論、レヴィウスがいる男子寮。
女人禁制で見つかれば処罰対象だが、アリアはどうしてもレヴィウスと話したかった。

夢の中でアウローラが言った空色の名と瞳を持つ少年。アリアの知る人物ではレヴィウスしかいない。とても謹慎がとけるまで待ってなどいられなかった。
男子寮のすぐ側まで来たアリアは、注意深く辺りを見回すと、誰もいないことを確認して木に足を掛ける。

そのまま足に力を入れてのぼって行った。下はスカートだがいちいち気にしていられない。どうせ誰も見ていないのだ。
シェイトとレヴィウスの部屋は覚えているため、迷うことはない。
窓の近くまで来たアリアは枝に乗り、軽くガラスを叩いた。

返事はない。もう一度、今度は少し強く叩けば、驚いたレヴィウスの顔が目に入る。
ひどく驚いてはいるが、察しのいい彼は手早く鍵を開け、アリアを迎え入れてくれた。

「どうしたの、アリアちゃん。俺、一応謹慎中なんだけどな」

と言いつつもレヴィウスは笑っている。
楽しくて仕方がないと言うように。

「すみません。でも、そこは笑うところじゃ……」

「だっておかしいからさ。一度ならず二度までも部屋に押し入られるとは」

レヴィウスにしてみれば相当おかしかったのか、けらけらと笑っている。余程なのだろう。目尻には涙が浮かんでいた。

「レヴィウス先輩!」

「ごめんね。悪気はないから。で、アリアちゃんがわざわざ俺の部屋まで来たってことは、シェイトのこと?」

その辺りは流石シェイトの親友ということだろうか。既に彼の顔からは笑みが消え、真剣な表情となっている。
アリアは頷くと昨夜の夢について話した。アウローラが言った空色の名と瞳を持つ少年のことも。
そんなアリアの話しをレヴィウスは馬鹿にすることなく聞いてくれた。

「空色の名と瞳なら俺だろうけどなあ……ウチ(セレスタイン家)の力だってシェイトを学園に戻すのは無理だし」

セレスタイン家はラクレイン王国屈指の名門。四大公爵家の中でももっとも力を持つ家だ。
その血脈は王国建国以前にまで遡り、王族に連なる一族として数えられる。
しかしそれでもクロイツェル公爵家に対しては動けない。そもそもシェイトはまだ“存在しない”のだから。
それに無理矢理連れ戻す訳にもいかないため、彼が学園に戻るという意思も必要だ。

「でも、何故シェイトは公爵の元へ行った?」

それだけが腑に落ちない。あのシェイトがアリアやクリス、そして自分を残してオズワルドの元へ行くだろうか?
冷静に考えてみると何かがおかしい。



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