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食堂へ
「……そう言えば席あるの?」

 食堂へと向かっていた二人だったが、アリアがふと口に出す。今は丁度夕飯時である。大半の生徒たちでごった返しており、席を確保するのは困難なはず。こんな事ならばもう少し時間をずらせば良かった。今更気づいても遅いが、今から引き返すのも面倒だ。

「あー、それならバッチリ。マリウスに取って貰ってるから」

 待ってましたと言わんばかりにフィアナが笑う。アリアはそんな親友を見ながらマリウスに同情した。彼女の幼馴染は色々と押し付けられることもあって、大変なことも多いとか。
 もっとも、マリウスも承知の上で引き受けているため、アリアも止めはしない。フィアナも無茶は言わないし、何だか楽しそうだからだ。
 そして予想通り、食堂は予選を終えた生徒たちでごった返していた。

 一口に食堂と言っても、学園の食堂は凡そ食堂らしくない。吹き抜けになった天井は硝子張りで瞬く星々が輝いている。所々に魔術によって炎を灯されたランプが淡い光を放ち、幻想的に浮かんでいた。

「んー、マリウス何処に居るんだろ?」

「マリウスならあそこね」

 きょろきょろと辺りを見回すが、フィアナには見つけることが出来ない。何せこの数だ。
 しかし、アリアの視線の先には偶然、彼の姿があった。彼女が指差した先にはマリウスが座っている。どうやら彼もこちらに気が付いたらしく、軽く手を振っていた。アリアはフィアナと連れ立って彼の席に歩み寄る。二人を見たマリウスはふわりと微笑んだ。

「良かった。流石にこの中じゃ見付けられないと思ったよ」

「ごめん。何か目印でも決めとけば良かった。……んー、お腹空いたなぁ。ねぇ、アリアとマリウスは何頼む?」

 フィアナは自らの失態に気づいて頭に手を当てる。しかし、次の瞬間には夕飯のことだ。切り替えが恐ろしく早い。



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