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力になりたい
窓越しにどこかへ向かうシェイトとレヴィウスをアリアは見かけた。
それは丁度授業を終え、教室から出た時だった。行き先は恐らく屋上だろう。

これから昼休憩な訳で二人が屋上に行こうとしているのは別におかしな事ではない。
だが二人の様子は少し変だった。レヴィウスは悲痛な顔をしているし、シェイトはどこか上の空というか、珍しい表情である。

少なくともアリアは一度も見た事がない。レヴィウスがあんな顔をしているのも、シェイトの様子がおかしいのも。
他の生徒には分からないだろう。だがアリアには分かる。

人の感情に敏感な自分には。それに、微妙に開いたシェイトとレヴィウスの距離。ぎこちないというか、何かが変だ。
それはまるで互いに何かを隠しているようで。

「先輩……?」

「アリアー? どうしたの? お昼行こうよ〜、お腹減っちゃった」

二人を凝視したまま動かないアリアを訝しげに思い、フィアナが後ろから声を掛ける。
マリウスの授業はアリアたちの教室であるため、彼はもう二人を待ってくれているだろう。

フィアナはもう我慢の限界だった。先の授業が彼女の嫌いな精霊論であることは勿論、その前の実習で体を動かしたからだ。
脱力し、ねーねーと訴えるフィアナだが、アリアは全く聞いていない。

「アリア〜? もしもーし、私の話聞いてないでしょー」

フィアナの声などアリアの耳には入っていなかった。恐らく、レヴィウスとシェイトは自分に気づいていないのだろう。

「ごめんね、フィア。先に戻ってくれる? 私、ちょっと用事を思い出したから」

「は? え、アリア? 用事って何のこと?」

用事なんてない。口からでまかせである。二人のことは心配だし、力になりたいと思った。
シェイトは自分を救ってくれた。彼の存在がアリアにとっての『救い』だった。

レヴィウスはこんな自分にも優しくて、力になってくれた。
それに彼はシェイトが信じた人だから。

「先に食べてくれていいから。マリウスにもそう言っておいて。じゃあフィア、お願いね」

「あ、アリアってばー!」

フィアナの声には答えず、彼女に教科書を押し付け、アリアはもと来た道を戻り始めた。
屋上に行くには二人を追うより戻った方が早い。もしかしたら、自分が入り込む余地なんてないのかもしれない。

だが大切な人の力になりたいと思うのに、理由なんていらないだろう。フィアナが、シェイトがアリアを助けてくれたように。



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あきゅろす。
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