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同属嫌悪
何が奇遇だ。自分が学園に通っていることくらい貴族の人間であれば殆ど知っている。
社交界で自分が何と言われているか知らぬレヴィウスではない。

魔術学校に通う変わり者とでも呼ばれているはずだ。
だが外面と顔はいいレヴィウスである。貴族連中は自分を道楽息子と侮ってくれているようで幸いだ。

だがこのオズワルドは違う。つまるところ、自分と同じなのだ。
だからこそ同属嫌悪というか、レヴィウスはこの男があまり好きではなかった。

「君には息子が世話になっているようだと聞いている。出来るならこれからも“あれ”と仲良くしてやって欲しい」

含みのあるオズワルドの笑みにレヴィウスは内心、困惑していた。
そもそもオズワルドの息子は学園に通ってすらないだろう。魔術の才を持つとも聞いたことがない。別段仲が良いこともないし、夜会で顔を合わせれば建前で挨拶するだけである。

「申し訳ありませんが、公爵のご子息には覚えが……」

「おや、誰と勘違いしているのか。レナートのことではない。シェイトだよ、レヴィウス君」

オズワルドの口から出た予想外の言葉に、レヴィウスは驚愕した。
何を言っているのだ、この男は。シェイトはシェイトだ。シェイト・オークスのはずだ。この男の息子などでは断じてない。

するとオズワルドは少年の動揺を察したのか、優しく微笑んでこう言った。

「先程、会って来たんだけどね、私と共に来る気はないと言われたよ。もしよければ君からも……」

「ふざけないで頂きたい。今更現れて父親面ですか? あんな所にシェイトを入れる手助けなど俺は御免です。シェイトが八年間、どれほど苦しんできたかも知らないで」

次にレヴィウスの口から出たのは怒りに満ちた低い声だった。
ふざけるのも大概にして欲しい。共に来る? それはシェイトを貴族の世界に引き入れるということだ。

何故今になって現れたか知らないが、今更都合が良すぎるではないか。シェイトにはちゃんとクリスという父がいる。
傷付いたシェイトの心を癒したのは彼だ。

八年間、シェイトがどれほど一人で苦しんだかも知らないで、よくそんな戯れ事が言えたものだ。

普段なら他人に対して声を荒らげることすら少ないレヴィウスである。
そんな少年が怒りを表したことに、オズワルドは驚いたらしい。だがそれもつかの間。次の瞬間には彼の顔は形だけの笑みに戻っていた。



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あきゅろす。
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