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一難去ってまた一難
オズワルドにとって少年の答えは半ば予想していたものだった。
知らなかったとは言え、八年も彼を放っていたのである。

辛かっただろう。悲しかっただろう。そんな時に自分は息子のそばにいてやることが出来なかった。
今更出て来て父親気取りは虫の良すぎる話だったのかもしれない。
だが、

「今日は大人しく帰るよ。けど、私は諦めない。……今まで一人にさせて、本当にすまなかった。それではクリス殿、失礼します」

オズワルドは悲しげに微笑み、学園長室を後にした。やけにあっさりしているというか、拍子抜けしてしまう。
シェイトは今、何とも言えない複雑な気分だった。
父は本当に自分が生きていたことを知らなかったのか。父の言葉と悲しげな笑みはとても嘘には見えない。

だが思いは変わらなかった。今までの八年を捨ててまで彼と、父と共に行くつもりは毛頭ないのだ。
クリスとシェイト、二人の間に微妙な空気が流れる。
今まですれ違いがなかった訳ではない。

彼に拾われて今まで本当に様々なことがあった。いつか彼の元から巣だっていくだろう、何の疑いもなく、シェイトはそう信じていた。なのに……。
そう思った時、シェイトはクリスの顔色が悪いことに気付いた。今の彼は血の気を失って蒼白と言っていい。

「養父さん……?」

「……大丈夫、大丈夫だよ」

心配する息子にクリスは大丈夫だと微笑むが、どこをどう見たら大丈夫になるのか。
だがクリスは駆け寄ろうとするシェイトを制し、縺れるように立ち上がる。

「大丈夫なわけないだろう! 今にも倒れそうなのに」

どうして自分を頼ってくれないのだ。
そんなに頼りないのだろうか。喉まで出かかった言葉を飲み込んで、シェイトは沈黙した。

あの頑丈で、風邪一つひかない養父が、だ。体力は万全とは言えないが、ほぼ戻っていると言っていたし、クリスが否定したように、魔力と体力のバランスが異常をきたすほど崩れている訳でもないだろう。

「養父さん!!」

クリスの体が横に傾く。駆け寄ったシェイトは間一髪で養父の体を受け止めた。既に意識はなく、宝石を思わせるオッドアイも閉じられたまま。苦しそうに息を繰り返している。
触れた体は信じられないくらい冷たかった。血液が通っていないのか、そう思わせるほどに。シェイトは養父を背負い、外にいるアレイスターに助けを求めるため急いで学園長を出た。



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