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もたらされた再会
学園長室へ向かいながらもシェイトは思案していた。何故クリスが自分を呼び出したのか。
心当たりが全くないのである。しかもあと五分ほどで授業が始まるというのに。

学園長室に行かなくとも家に帰ればいつだって話せるし、休み時間でもいいはずだ。
学園長室までやって来たシェイトは、まるで門番のように佇むアレイスターに声をかけた。

「アレイスター」

「どうした、シェイト?」

副学長である彼なら何か知っているのではないのか。
いつものように無表情とも思える顔からは感情を読むことは出来ない。

「今、養父さんに呼ばれたんだけど、何か知らないか?」

本来なら生徒と教師、シェイトは敬語でなければならない。
しかしアレイスターとはもう八年の付き合いであるし、何より彼自身が敬語で話すことを望んでいないのだ。

「私の口からは何とも」

尋ねるシェイトにアレイスターは静かに首を振った。
感情を顔に表すことの少ない彼にしては珍しく、どこか逡巡しているように見える。

アレイスターの口からは言えないということ。
それは彼が“何か”を知っていることを示すと同時に、アレイスターの独断では話せないということだ。

「分かったよ」

ならば何を尋ねたところで無駄だろう。胸騒ぎがする。シェイトは心を決め、扉をノックした。

「シェイト・オークス、参りました」

「入りなさい」

やや間が合ってクリスの声が返ってくる。その声がかたく、僅かに震えていることにシェイトは気づいていた。
一度深呼吸をし、ドアノブに手をかけた。

「失礼します」

扉を開けた先、学園長室にはクリスとそして一人の男性の姿がある。
年の頃は三十代前後だろうか。鮮やかな青い髪に灰色の瞳。
どうして何故、今になって現れる。

柔和な顔立ちの男にシェイトは見覚えがあった。どうして、と声を出したつもりだったが、それは声にはならず吐息となっただけだった。

「シェイト、わざわざ君を呼び出した理由は分かるかい?」

クリスの色違いの瞳がシェイトをうつす。
頭の中が真っ白になり、答えることも出来ない。シェイトはただ困惑していた。

「シェイト」

男性が自分を見てふわりと笑う。あれから八年の時が流れたというのに記憶に残る“彼”と寸分も違わない。

「……父さん」



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あきゅろす。
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