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嵐の前の静けさ
「優雅というか何というか……普通の人ではないよね?」

男性をじっと見つめていたフィアナがアリアの耳元で呟く。身に纏っている服はシンプルだが、それでも高級なつくりであることが分かる。

それに服装だけでなく、立ち振る舞いやふとした仕種が優雅なのだ。
一朝一夕で身に付くものではないだろう。

「貴族の人?」

アリアも貴族と言われればレヴィウスとロザリナしか思い浮かばないのだが、目の前を通り過ぎた男性はそんな二人に通じるものがある。

すれ違う瞬間、男性がこちらを、というよりアリアを見た気がした。

「私、見られてた?」

「うん。でも一瞬だったし、変な視線でもなかったよ」

思わず男性の方を振り返るが、既に二人の姿はない。会った事などないはずなのに、どこかで見た気がする。
勘違いだろうか。その時のアリアは男性のことなど直ぐに忘れ、気に留めることもなかった。

「お、アリア。急がないと授業始まるよ。先生、一分でも遅れるとうるさいんだから。あー、めんど」

首を傾げ、向き直ったアリアにフィアナが唇を尖らせて言う。
精霊論は選択授業であるが、戦闘技術科の生徒は必修科目であるため、嫌でも受けなければならない。

元々頭を使うより、体を動かすことが好きな彼女だ。更に理論と名のついていることからやる気も出ない。

「はいはい。まだ時間に余裕があるから大丈夫。もし遅れたら私から先生に言ってあげるから」

フィアナはともかく、アリアは授業を欠席することもなく、呑みこみも早い優秀な生徒だ。
確かに優秀な生徒が好きなあの先生なら許してくれそうな気もする。

二人が何気ない会話を続け、教室の前まで来たその時、校内放送を知らせる音が鳴り響いた。

『2-A、シェイト・オークス。至急学園長室へ』

呼ばれたのはシェイト先輩。しかも学園長であるクリス直々の呼び出しだ。
しかしクリスはシェイトの養父なのだから、呼び出すこと自体不自然なことではない。

だからアリアもそしてフィアナも僅かに不思議に思ったが、席につき授業が始まった事で直ぐに忘れていた。
それがまさかシェイト・オークスという人物を揺るがす発端だとは思いもしなかった。



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