決して相容れないもの
「あ、ごめん、ごめん。でもあんまり気にしない方がいいよ。占いだし。それに私とマリウスだって相性最悪のわりに大丈夫でしょ?」
自分の余計な一言に更に落ち込んだアリアにフィアナはあっと口を押さえて、慌ててフォローの言葉を口にする。
後先考えず思ったことを喋ってしまう自分の性格をフィアナは初めて呪った。
アリアとは親友同士とは言え、フィアナが知らないことは多い。夏季休暇前に起こった魔術暴走。
それを止めたのは彼女であるし、アリアは目には見えない心の傷を負っている。
それについて深くつっこんだことは無かったが、二年以上傍にいればおのずと分かるのだ。
フィアナはアリアから話してくれるまで待つつもりだし、それでいいと思ってもいる。
アリア・ハイウェルという少女は人との絆が断ち切られることを嫌がる。
それでいて自分から進んで他人に深く関わろうとはしない少女だ。
「そうかなぁ……でもそれだけじゃないの」
「え?」
アイオーンとアウローラのことだ。混沌と秩序は引き合うも決して相容れぬもの。それは正に光と影のように。
自分とシェイト先輩。そう、自分達は決して相容れない。何故なら……。
そこまで考えてアリアは自分の思考がおかしいことに気付いた。
混沌と秩序が相容れない? 自分とシェイトも?
どうして自分はそう考えたのか、アリアには見当が付かなかった。
誰に教えてもらったわけでもない。直感的にそう思ったのだ。
「アリア?」
「ごめん。何でもない。気にしないで」
心配そうに声を掛けるフィアナにアリアは笑みを作ってみせる。こんなことフィアナに相談出来るはずがなかった。
いや、シェイトにだって言えないだろう。
「ね、フィア。それより、あの人見て。外部の人がいるって珍しくない?」
アリアは話を逸らすように視線をむこうから歩いてくる人物に向けた。
副学長アレイスターに連れられるように廊下を歩くのは一人の男性。
年齢は恐らく三十代半ばほど。若々しい外見から三十歳にも見える。
男にしては長い睫毛にすっと通った鼻筋。柔和な顔立ちをした優しげな男だった。
鮮やかな青い髪に灰色の瞳。眼鏡を掛け、砂色の外套を纏っている。
その下はシャツにスラックスというラフな格好だが、服の作りはしっかりとしており、高級なものだと分かった。
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