母なる混沌より生まれし存在
混沌の海、全てを生み出した原初の海。私たちはそこから生まれた。創世の女神アルトナとは似て非なる存在。
人は時に私たちを神に等しきものと呼ぶ。混沌と秩序。相反する、だが、互いに影響を与えずにはいられないもの。
『わたしは秩序より生まれし存在。黄昏を望み、宵闇を求むる者。グレイス・アウローラ』
『我は混沌より生まれし存在。夜明けを望み、曙光を求むる者。ディアウス・アイオーン』
現世とも夢とも違う世界の狭間でうつろい行く世界を見守る存在、それが我ら。
混沌の支配者と秩序の調停者。かつて人は我らを執行者とも呼んだ。
確かに刹那を生きる人にしてみれば我らは神に等しき存在なのだろう。
だが私たちは全知全能ではない。もし本当にそんな力があるのなら、私たちはあんな半身を裂かれるような選択をせずともよかった。
私とアイオーンが目覚めたこと。また全ては繰り返されるというのだろうか。
ねえ、アリア。私は貴女の魂と共に居られるだけでいいの。貴女のいない世界なんて耐えられないもの。
『ねえ、そうでしょう? アイオーン』
目を開けていなくとも、肉体が眠っていても分かる。本来、私たちは肉体という器を持たぬもの、意識だけの存在。それに……混沌と秩序、私たちは繋がっているのだから。
『それが我らに与えられた運命(さだめ)。そのために我らは母なる混沌の海より生まれたのだ』
王と彼女のために。肉体は眠りについていようとも我らの意識が途絶えることはない。我らは世界。世界の意思なのだから。
『結末を知っていても願わずにはいられない。運命が二人にとって幸せであるように。私たちが代われるのならどんなに……』
『アウローラ、それは言わぬ約束だ』
そう、執行者、混沌の支配者、秩序の調停者と呼ばれても所詮、我らは傍観者に過ぎないのだから。
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