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学園長室にて
東棟最上階、学園長室。重厚な作りの扉の前には在室中と書かれた金属のプレートが掲げられている。この区域一帯は学園長であるクリスの専用フロアとなっているため、誰にもすれ違うことがない。扉の前まで来た三人は、代表してレヴィウスがノックをした。

「学園長、ご在室でしょうか? レヴィウス・フォン・セレスタイン、マリウス・ラーグ、フィアナ・クルスラー、以上三名参りました」

普段は軽く飄々としていてもする事はきっちりする。それがレヴィウス・フォン・セレスタインという人間だ。

「入りなさい」

やや間があってクリスの声が返って来る。三人は失礼します、と学園長室に足を踏み入れた。生徒がほぼ訪れる事が出来ない学園長室は、両脇にはきっちりと揃えられた本棚に柔らかそうなソファー。壁には優しいタッチで描かれた暁に飛翔する美しい金色の鳥の絵が飾られている。

そして広い部屋の一番奥に置かれた執務用の机と椅子。クリス・ローゼンクロイツは、椅子に腰掛け、両手を机に付いた姿でそこにいた。
肩まで伸びた灰色の髪と左右色の違う朱と青の瞳に片眼鏡。金の装飾がされた黒いローブをきっちりと着こなしたクリスはつい一週間ほど前に大怪我を負ったとは思えない。

「わざわざ呼び出してすまなかったね」

そう言って笑うクリスは表面上は健康そうだ。だがシェイトが心配するように無理をしているのかもしれない。何と言ってもシェイトの父親なのだから。

「いえ、学園長こそお体の具合はよろしいのですか?」

「ああ、問題ないと言う所までは行かないが、心配いらないよ。それとわざわざ畏まらなくてもいいからね」

クリスの言葉にレヴィウスは待ってましたとばかりに頷いた。紳士然とした話し方は嫌いではないが、色々と面倒臭い。

「ではお言葉に甘えて。心配ないなら良いけど、シェイトが早く帰って休めってさ」

次の瞬間には一気にいつもの口調である。服装は勿論変わっていないものの、雰囲気と口調でここまで印象が変わるものなのか。マリウスとフィアナは取りあえず二人の会話を見守るしかない。

「……やっぱりシェイトは心配性だね。分かったよ、話が終わればそうさせて貰うから」

そこで初めてクリスは肩の力を抜いたらしい。彼自身、自分でも気付かない内に固くなっていたようだ。それを息子に指摘されるとは父親としての面目が立たない気がする。思わぬ息子の気遣いに感謝しつつ、クリスは苦笑した。



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