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養父と息子
「あー……、なるほどな。しっかし何で至急なんだ? あの人の事だからくだらない理由じゃないだろな」

言いながらレヴィウスはパンを一気に口の中に詰め、スープで流し込んで行く。公爵家の人間とは思えない、優雅さに欠いた食べ方だが残す方が勿体無い。一方マリウスとフィアナは慌てることなく、ゆっくりと咀嚼する。
マリウスもフィアナもレヴィウス同様、学園長の性格をよく分かっているため、急ぐようなことはしない。

「まあ、それは有り得るだろうな。八割方くだらない理由だ」

こちらはシェイト。養父について誰よりもよく分かっている彼は、呆れた顔でスプーンを口に運ぶ。こればかりはアリアも学園長の名誉を守りきれない。
クリスは長い時を生きてはいるが、結構お茶目なところがあるのだ。

「そ、そうですね」

でも本当にシェイトを引き取ってくれたのがクリスでよかったとアリアは思う。学園長の優しさがあったからシェイト先輩は辛くても頑張れたんだと。

「おし、シェイト、それじゃあ行ってくるわ。マリウス、フィアちゃん、行こうか」

そう言ってフィアナに手を差し出したレヴィウスは、先ほどまでがっついて食事をしていた者とは思えない華麗な変わりぶりだった。
その佇まい、正にセレスタイン公爵家子息の名に相応しい貴公子。

変わり身が早いと言うか何と言うか。だが差し出された手を無視する訳にも行かないため、フィアナは笑いを堪えながらその手を取る。

「ああ、行って来い。それと養父さんに早く帰って休むように伝えてくれ」

心配そうに、だが平静を装うシェイトは父を案じる息子の姿そのものでアリアは思わず微笑した。それはかつての養母イヴリースと自分を見ているようでもあったから。

「アリア?」

「すみません。先輩、やっぱり学園長のことが心配なんだなぁって」

文句の付けようもない整った容貌に、学問も実技も完璧にこなすシェイト・オークスと言う人間がいざ養父のこととなると顔色を変える。それはアリアに対しても同様だが、彼女自身は気付いていない。
そんな何とも言えない、互いが見えているようで見えていない二人にレヴィウスは苦笑する。先はまだまだ長いな。

「分かったよ。責任持って伝えてやる。じゃ、後でな」

「アリアさん、僕とフィアに構わず先に戻っていてくださいね」

「行ってくんね〜」

ああは言っていたが多少は早く行かねばならないと思ったのだろう。三人はトレイを片付けて足早にホールを後にした。アリアは止まっていたスプーンを動かし、ぽつりと呟く。

「何だか忙しないですね」

「そうだな。ホントにレヴィが居ると居ないのじゃ全然違う」



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あきゅろす。
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