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自分という存在
ディヴァイン・クロウの一件から何かが明確に変わった訳ではない。何事もなかったかのように日常は過ぎて行く。秩序の調停者“アウローラ”ともあれ以来、会えなかった。でも確かに彼女の存在を感じのだ。まるで心に灯った一点の蝋燭の光のように。

爽やかな笑顔でレヴィウスに詰め寄るシェイトを見ながらアリアは考えていた。アウローラと対をなすように混沌の支配者の名を冠する“アイオーン”。彼もまたあれ以来、シェイトの前に姿を現していないらしい。

……アウローラを呼べた自分。自分は一体何者なのだろうか。どこで生まれたのかさえ分からない。物心ついた時から両親もいなかった。
唯一の手掛かりは一つの宝石だけ。ペリドットに似た薄緑の透き通った石はまだ誰にも見せたことがなかった。

両親は自分を捨てたのか、それともやむにやまれぬ理由があったのか。真実を知るのが怖くて、アリアは誰にも言えずにいた。
知りたい、でも怖い。私はいらない子なの? それとも望まれて生まれてきたの? そんなの言い出せるはずがなかった。ただでさえ、心配してくれる義母にもミゼルにも。

アリアは鎖を通していつも肌身離さず持っている宝石を握り締める。どんなに願っても過去は付き纏う。ディヴァイン・クロウだけではない。
一つが叶えば欲深くも望んでしまう。己の生まれた意味を。

「分かった。もう勘弁してくれ」

ヘロヘロになったレヴィウスがテーブルに倒れ込む。笑顔でシェイトにしぼられたのが相当堪えたらしい。マリウスは気の毒そうに、フィアナは面白そうに突っ伏したレヴィウスを見つめている。とその時、校内放送を知らせる音が鳴り響いた。

『1-A、マリウス・ラーグ、フィアナ・クルスラー。2-A、レヴィウス・フォン・セレスタイン。至急学園長室へ』

「は? 学園長室?」

半分魂の抜けた状態だったレヴィウスが弾かれたように顔を上げる。学園長に呼ばれる理由なんてないはずだ。……多分、いや、ない。

「多分、“リフィリア”の一件だと思いますよ。僕もフィアも詳しく、突っ込んだ説明は聞いてませんから」

そう、三人は詳しい所までは聞いていない。マリウスが倒れた理由も逆十字が関わった魔術が原因だと言うことだけ。何故、学園長が怪我をしたのか。アリアが何に関わったのかも分からない。事実関係が明確になり次第、クリスから直々に説明があると聞いていた。



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