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触らぬ神に祟りなし
「私たちのクラスは喫茶店をするんですけど、先輩たちのクラスは何するんですか?」

サラダを小さく頬張りながらアリアが尋ねる。自分たちのクラス同様、殆どのクラスが既に準備に入っている。
一年や二年は比較的、模擬店など凝ったものが多く、三年は展示が多い。学園祭は専門課程だけでなく、普段は関わることのない基礎課程の生徒も参加する一大イベントだ。

そう言えばシェイトは自分のクラスが何をやるのか聞いてなかったことを思い出した。スープを含む手を止めてレヴィウスに視線を向ける。

「そう言えば俺たちのクラス何するんだ?」

「あ? シェイトってば聞いてなかったんだっけか。レストランだとさ……執事」

最後に付け加えられた一言を聞き逃すシェイトではない。じっとレヴィウスを見れば、直ぐに視線を逸らされる。レヴィウスは明らかに何かを隠している。
四年来の付き合いであるシェイトでなくとも、隣で見ているアリアでさえ分かることだ。態度に出ない辺り、こう見えてレヴィウスは割と正直なのかもしれない。

「今、確かに執事って言っただろ?」

「エ、オレ、ソンナコトイッテナイヨ?」

棒読みだ、棒読み。顔も引き攣ってるし。何とかシェイトから逃れようと隣のマリウスにしがみつく。これではどちらが年上か分からないが、後ろめたい事があるレヴィウスも必死だ。

「ちょ、マリウス、頼むから助けろ」

心情的にはアリアに助けて貰いたいのだが、それはシェイトが許さない。いくらマリウスでもシェイトは敵に回したくない。触らぬ神には祟りなし。先人が残した言葉は偉大だ。

「フィア」

マリウスは困ったような微笑でフィアナを見る。だが助けを求められたフィアナは無言で親指を立てた。向けられた紫水晶の瞳から推測するに、どうやら一人で頑張れと言うことらしい。

「あ、あの! 先輩怒ってます?」

アリアが心配げにシェイトの顔を覗き込む。星屑をちりばめたような銀色の瞳はやはり、あの時の少年と同じだ。シェイトもアリアに言われれば怒ってるなどとは言うはずがない。

「あ、いや、怒ってないよ」



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あきゅろす。
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