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少しだけ分かった事
「酷っ、マリウスを入れただけでも褒めてよ俺を! いくら美形でも男はスルーなんだよ」

知るかと本気で殴りそうになったシェイトはぺし、と軽くレヴィウスの頭を叩いた。今の彼には何を言っても無駄だろうと言うことで頭に乗った手でやる気なさ気に撫でてやる。

「お前が非常に女性好きだとは分かった。偉い偉い」

「ちょっ、シェイト、お前分かってないだろ。明らかに棒読みじゃねえか」

ぽかーんと二人のやり取りを見ていた(見るしかなかった)アリア、フィアナ、マリウスは思わず笑みを零した。

「シェイト先輩、僕は構いませんよ。それでこそレヴィウス先輩ですし」

笑って答えるマリウスにレヴィウスの顔が引きつる。マリウスとはこう見えても結構な付き合いだ。シェイトに言われても何となく許せるのだが、マリウスに言われると何故か腹が立つ。
自分でも理不尽だとは思うが、仕方が無い。

「何が俺らしいんだよ、何が。マリウスくーん、もう一度お兄さんに分かりやすく言ってくれるかな? ねっ、アリアちゃんもそう思わない?」

レヴィウスはいつかシェイトにもやったように、マリウスの頬を掴んで思い切り引っ張った。効果音を付けるならびろーん、と。マリウスが逃げる暇も無い。一瞬の早業だ。
レヴィウスの自称、俺の女神アリアちゃんに微笑み掛ければ困ったように微笑された。

「先輩が優しいのは分かりますから、マリウスを離してあげてください」

「流石俺の女神アリアちゃ……」

言おうとした瞬間、シェイトの裏拳が飛んできた。だがその鋭さとは裏腹にシェイトの表情は湖面のように穏やかだ。しかしそれがレヴィウスにとっては怖い。あれだ。鎌首をもたげた死神が天使の微笑を浮かべている。

アリアはそんな剣呑な雰囲気を湛えるシェイトには気付いていないらしく、二人とも仲が良いですね、と見惚れるような笑顔を浮かべている。アリアにはこの攻防がじゃれ合いとでも映っているのだろうか。
レヴィウスにしてみれば、ある意味命がけだと言うのに。
殆ど何かに気を掛けない彼がアリアにだけは反応している。その事実に彼女は恐らく気付いていない。

「ええっと、シェイト先輩とレヴィウス先輩はいつもこんな感じなんですか?」

「そんな訳ないでしょ、アリア」

フィアナは呆れたように言うが、アリアには二人がじゃれ合っているようにしか見えなかった。これが『幸せ』なのだろうか。

まだアリアの中に罪悪感は残っている。だが少しだけ分かるようになった。生き残ったからこそ罪を背負うのではなくて、散って行った命の分も精一杯生きること。
アリアは笑う。今の幸せを噛み締めるように。それは今までの彼女がどこかに持っていた影を感じさせない、あたたかな笑みだった。



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