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親友
「聞いてなかったのかよ」

これだからシェイトはと鼻で笑われる始末である。それはレヴィにだけは言われたくない。頭に来たシェイトはつい辛辣な言葉を返してしまう。普段ならそんな事はないのだが、ここ最近色々あった事もあり、彼も疲れているのだ。

「あのなあ、俺だってたまには上の空な事だってある。万年馬鹿なレヴィには言われたくないな」

「へーへー、どうせ俺は馬鹿ですよっと。……お前、アリアちゃんと何かあっただろ?」

だがちょっとの事で怯むレヴィウスではない。シェイトの馬鹿発言も全く堪えていないようである。と言うかそんな軽い物言いは実に彼らしいのだが、折角の美貌が台なしと見るか、近寄りがたい完璧な美貌に親しみ易さが出たと見るか、それは人それぞれだろう。
シェイトの場合は普段、後者であるが、今は断然前者である。

「……何かって何だよ」

自分では普通の声で言ったつもりだが、果たしてレヴィはどうとったか。何かあったかと言えばあった。ただそれは嬉しい事であり、レヴィが言うような悪いことではない。

「んー、シェイトって割と人と深く付き合わないだろ? アリアちゃんは別かなって思ってたんだけど、ここ最近、妙に仲良くなってないか?」

レヴィウス・フォン・セレスタインと言う少年は、ああ見えてかなり勘が良い。人の奥底にあるものを見抜く力もある。
それはセレスタイン公爵家の後継ぎとして必要な能力だが、レヴィウス自身が生まれ持った才だ。
確信を持って話すレヴィウスに隠し通す事は無理だと判断したシェイトは、仕方なく少しだけ話すことにした。

「前に言ったことあるだろう。俺がディスレストの出身だって。……アリアも俺と同じだった」

目の前の黒板を見つめたまま、シェイトは今までと変わらぬ口調でそう言った。クリス以外にはレヴィウスにだけ話している自分の過去を。

「……そうか。良かったな」

レヴィウスは一転、真面目になって小さく微笑んだ。シェイトは辛いところを悲しいところを決して他人には見せしようとしない。
それは幼い彼が己を守る術だったのかもしれないが、少しは他人に頼ってもいいのではないか。そう思わせるような危うさがシェイトの中にあった。
だが苦しみや悲しみを分かち合える存在が出来たのは、親友であるレヴィウスにとっても喜ばしいことである。



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