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幸せは退屈で
シェイト・オークスは暇を持て余していた。リフィリアで起こったディヴァイン・クロウの一件と比較すると戻って来た日常はあまりにも退屈であると同時に幸せだった。
シェイトは机に片肘を付き、ぼんやりと黒板を見つめている。今の時間は授業ではなく、シェイトたちのクラスが学園祭で何をするのかを決めるための時間だ。

殆どのクラスの催しものが決まっている中、2-Aだけが未だ決まっていないのには訳がある。提案された催し物が多すぎたからだ。

演劇や展示に始まり、クラスの美人コンテスト、コンサートや飲食店等など。もう何度目にもなってくれば当然疲れてくる。そう言う訳で全く話を聞いていなかったシェイトは後で後悔することになるのだが、それは十分ほど後のことだ。
かつかつとチョークが黒板に当たる音が届いてくる。

心配なのは養父のこと。シェイトの説得とアレイスターが殆どの仕事を肩代わりしてくれると言う申し出にクリスは、やっと休息を取ることを了承したのだ。その他にも親友、アルノルドからの説得もあったようである。

やるべき事をサボったり、アレイスターに押し付けるのが常なのに本当に苦しい時は休まない。そんな人間なのだ。クリス・ローゼンクロイツは。
本当に養父には心配する者の気持ちにもなって欲しいものだ。
あの時、約束してくれたではないか。絶対に自分より先に死なないと。普通の人間なら不可能だが、老いとは無縁であるクリスなら可能だ。

未だシェイトが上の空な中、教室に午前最後の授業終了を知らせる鐘の音が響いた。皆一斉に席を立ち、学園内に散って行く。黒板を見つめていると書かれていたチョークの白い字が消される。

その中に執事やら何やら嫌な予感のする単語が書かれていた気がするのだが気のせいだろうか。
シェイトが椅子から立ち上がろうとした瞬間、左肩に誰かの手が置かれた。

「シェーイトくん」

にやにやとした笑みを浮かべてこちらを見るのはレヴィウス・フォン・セレスタイン。鮮やかな朱色の髪に、澄み渡る空を思わせる瞳。制服をやや着崩した、息を呑むほどに整った顔立ちの少年だが、浮かべる笑みのせいで魅力が四分の一くらい落ちている。

「勝手に決められてたみたいだけど、いいのか?」

話を全く聞いてなかったシェイトは首を傾げるしかない。ぽかんとする親友に話が通じない事に気付いたレヴィウスは、がっくりと肩を落とした。



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あきゅろす。
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