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騒がしい少女
アリアはアスタロトの一件があることから、ラグナ、もといハロルドから聖人の力を込めた羽根を渡されていた。いくら学園が結界により守られていると言ってもそれは、アスタロトほどの高位の悪魔には心許ない。

契約者も痛手を受けた以上、当分は大きな動きはないと思われるが、用心するに越したことはないからだ。学園の要であるクリスもディヴァイン・クロウの一件で失った魔力と体力は未だ戻っていない。十分な休息が必要なのである。
だが学園長という立場にいる彼は多忙を極める。そこでアレイスターがクリスの仕事を代わりにこなすという申し出と、シェイトに説得されたことでやっとクリスも休息を取ることを了承したのだ。

「そっかー。でもよかったんじゃない? おし、そしたらお昼、食べに行く?」

とその時、誰かが素早い動きで三人に近寄ってきた。茶の髪と瞳を持つ栗鼠のような印象を持つ少女――ファルラ・レスタークである。

「やっほー、三人とも。今日放課後採寸することになったから残ってね」

彼女はクラスにおける学園祭実行委員のようなものだ。他のクラスは展示や販売など様々だが、アリアたちのクラスは喫茶店をすることが決まっている。
アリアとマリウスの二人は催し物が喫茶店と決まった時、調理担当に立候補したのにも関わらず、ファルラとレティスに接客担当に任命された(強制で)。と言う訳で最後まで渋っていたアリアとマリウス、それに付き合っていたフィアナの採寸が済んでいないのだ。

「分かりました。……あの、どうしても調理は駄目ですかね?」

マリウスが駄目もとで仁王立ちをしているファルラを見上げるが、彼女の鳶色の瞳が猫のように煌めいた。

「だーめ。客寄せ手伝って貰いたいし。もっちろん、アリアもダメだからね」

自分までしっかりと釘まで刺された。接客より調理をする方が好きなのに、クラスのみんなに接客の方がいいと言われたことも断れなかった理由である。

「まあまあ、何とかなるって」

お気楽にアリアとマリウスの肩を叩くフィアナ。そりゃあ何とかならなきゃ困る。フィアナは随分乗り気だからいいだろうが、少しはこちらの身にもなって欲しいものだ。

「そいじゃよろしくねー。私、今からレティスと打ち合わせして来るから」

言うなりファルラはスカートの裾を翻し、急いで教室を出て行った。昼休みだというのに仕事熱心である。この数十秒で疲れたらしいマリウスがフィアナに気付かれぬように、小さくため息をついた。



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