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戻って来た日常
教戒と並ぶ、世界最大の魔導師育成機関――学園《アカデミー》。魔導師の卵たちが集う学園には一年に一度だけ、魔力を持たぬ人々と交流するための行事、学園祭が存在する。
勿論、日頃の研究成果や鍛練の成果を発表する機会でもあるのだが、あくまで交流がメインである。
何にしても修学旅行を終えたこの時期の学園は非常に忙しい。それは一年であるアリアたちも例外ではなく、リフィリアの一件から一週間あまり、学園に戻った皆を待っていたのは、学園祭の準備だった。

憧れのマイスター、《瑠璃》のミゼルに会えたレティスはいつも以上に張り切っているし、錬金科専攻のクラスメート、ファルラも同様だ。
レティスもファルラも自信作を一品、展示するらしい。

「ねえ、マリウスってば、本当に大丈夫?」

授業が終わると同時にフィアナが心配そうにマリウスの顔を見る。マリウスが父と再会を果たした後、フィアナは目を覚ました彼を見て大泣きしたのだ。
数年前に同じような件があったからだろうが、フィアナは当分の間、抱きしめて離してくれなかった。

「大丈夫だよ。退院前の検査も異常なしって太鼓判を押してもらったから」

ミゼルやマリウスが倒れたのは、ディヴァイン・クロウによって集束された異常ともいえる精霊因子と魔力濃度によって引き起こされたものだ。リフィリアとは一枚隔てた世界で起こっていた事であり、本来なら人体に影響を与えるまだ前の段階だったのだが、二人はクラウディアと同じように影響を受けやすい体質だったのだ。
無事目覚めたとは言っても、何らかの後遺症が出ないとも限らない。そこで退院の前にありとあらゆる検査に、フィンの診察を終えた後、やっと病院から帰されたのだった。
ミゼルの方はマリウスよりも影響を受けたこともあり、今もまだ入院中だが、近い内に退院出来るらしい。

「フィア、マリウス」

二人の元にやって来たのはアリアだ。フィアナは周囲に聞かれないように、どうだったと小声で尋ねる。

「うん、学園長の方ももう心配ないみたい。シェイト先輩には小言を言われてるみたいだけど、苦笑いしてたから」

アリアは笑いを堪えつつ、つい数分前の出来事を思い返した。先の時間、学園長室に呼び出されていたのだ。ディヴァイン・クロウの一件はフィアナやマリウス、ミゼルを入れた関係者にしか知らされていない。
余計な混乱を避けるためと逆十字の動きを見るという理由もある。



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