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決着
「なっ……かわされた!?」

 フィアナの口から驚きの声が漏れる。
 マリウスが唱えた魔術は一見効果が無いように見えたが、どうやら違うようだ。現に彼は地面から吹き上がる水流を苦もなく回避している。

 フィアナはマリウスほど魔術に詳しくないため、先程の呪文がどんな効果を及ぼすのか見当もつかない。 それでも諦めるものか。

『フィア。お前はクルスラー家の跡取りだろう?』

 寮に入る前に父に言われた言葉が、今もずっと心に残っている。ここで諦めたら父に合わせる顔がない。父の反対を押し切ってまで学園に来た意味がないのだ。
 一人前の魔導師にならなければ、到底父には認めてもらえない。

『全てを戒める凍てつく鎖よ。我が声に応じ、彼の者を拘束せよ! アイシクル・バインド!』

 フィアナの導きに応じ、白亜の舞台に冷気を纏った無数の蒼氷の鎖が顕現する。
 鎖は一直線にマリウスへと飛来するが、ことごとく避られ、やはり彼を捕らえる事が出来ない。

「やっぱり詰めが甘いわね、マリウス」

「そうだね、僕の負けだよ。降参だ」

 フィアナが笑うと、マリウスも笑う。両手を上げた彼の腕には、避けた筈の氷の鎖が巻き付き、動きを封じていた。
 アイシクル・バインドは追尾性の拘束魔法だ。
 例え知覚速度を上昇させたとしても、自らの肉体以上の力を出すことは出来ない。自分の身体能力で躱せない攻撃は、いくら知覚速度を速くしても回避は不可能である。

『勝者、フィアナ・クルスラー!』



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あきゅろす。
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