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幼なじみの二人
『それではCブロックとDブロックの代表者は前へ』

 アナウンスに従い、Cブロックの代表者、フィアナとDブロックの代表者、マリウスが歩み出る。
 互いを見つめる二人の間に、語るべき言葉は無い。ただ己の全力を出し切るまでだ。

『始め!』

『天に拡がる数多の星々よ、女神の威光たる無垢なる光輝よ。我が声に応じ、穢れ無き光、彼の地に降らせ賜え。光あれ、スターライト・レイ!』

『天駆ける翼よ。我が呼び掛けに応え、汝が加護を我に与え賜え。ウイング・ゲイル』

 マリウスが詠唱を終える前に、フィアナが唱えたウイング・ゲイルが発動する。
 その発動と共に、マリウスが唱えたスターライト・レイの詠唱が完成し、白亜の舞台に光の翼と純白の光柱が幾つも降り注ぐ。

 ランダムに降り注ぐ光の柱に法則性は無く、フィアナに避ける事は不可能にも思えた。
 だが神の奇跡にも思える光柱は、彼女を捕らえる事が出来ず、全て紙一重で躱される。
 
 よく目を凝らしてみると、フィアナは薄い緑色の風の衣を纏っている事が分かるだろう。
 ウイング・ゲイルは、風に属する下級魔法で、対象の移動能力や瞬発力を一定時間上昇させる魔術である。

 加えて彼女の一族は、代々優秀な武人を輩出しており、フィアナも例に漏れず、幼い頃から戦闘訓練を積んでいるのだ。
 その脚力、瞬発力共に常人の比では無い。

「やはり当たらないか……」

 マリウスには躱される事が分かりきっていた。
 何故なら、昔から彼女の修行に嫌と言う程付き合わされて来たのだから。
 それと同時にフィアナが持って生まれた才に奢る事無く人一倍努力し、頑張って来た事も全部知っている。

 しかし、どれ程体術が優れていようがこれは“魔術対抗試合”なのだ。
 武器の使用は勿論の事、魔術以外による攻撃も禁じられている。魔術の腕だけならば、マリウスの方が一枚も二枚も上手だ。
 勿論フィアナが一筋縄では行かない事も彼は十分理解している。

「今度はこっちから行くわよ。荒れ狂う暴風よ。喚び声に応え、我が敵を切り裂け!エアリアル・スラストッ!」

 フィアナは不敵な笑みを浮かべると彼女の十八番である呪文を紡ぐ。不思議な旋律が高らかに響いた。
 エアリアル・スラストは風に属する下級魔法。フィアナが得意とするのは、スピードを重視とした下級魔法の連続発動なのだ。
 いくらマリウスがフィアナより魔術を得意としていても、簡単に凌げる程彼女も甘くはない。

 眩い緑の魔法陣が描き出され、詩に応えた精霊因子が集束する。
 風は不可視の刃となり、マリウスを切り裂こうと顎を開けた。 

 マリウスは身を反らし、間一髪で避けたが、完全に避けられず、腕を浅くだが切り裂かれてしまう。
 その間も、フィアナの攻撃が緩む事は無い。エアリアル・スラストが回避された瞬間、淀み無く次の詠唱へと繋げる。

「まだまだぁ! 大地を分かつ激流よ。喚び声に応え、我が敵を飲み込め。アクアプレッシャー!」

 マリウスとて、このまま押しきられるつもりもない。
 地面から吹き上がる水流を必死で避けながら、マリウスは呪文を紡ぎ出し、無属性中級魔術アクセラレイト・リコナイズを発動させる。

 アクセラレイト・リコナイズは知覚速度をある程度だが加速させる中級魔術。今のマリウスにはフィアナの動きも魔術の軌道も手にとるように分かる。彼の目には全てスローモーションに見えているのだ。後はただ、少し体を捻るだけ。



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