抑え切れぬ悲しみ
「フィア!」
何よりも彼女が心配だった。病室に駆け付けたアリアが見たのは、気丈にもマリウスの手を握るフィアナの姿だった。彼が搬送されたのは、ミゼルが入院しているリフィリア唯一の医療機関。
「あ、アリア……」
来る途中に聞いたレヴィウスの話しではマリウスにこれといった異常はなかったらしい。ただ、少し気分が悪いと漏らしていたようではあるが。
待ち合わせの広場について間もなく、いきなり倒れたと。
「大丈夫なの?」
「私は……大丈夫。でもマリウスは分かんない。待ち合わせの場所についてからいきなり倒れてっ! いくら呼んでも起きてくれなくて、私、私……」
フィアナは俯き、肩を震わせた。泣いているのかもしれないとアリアは思った。フィアナは強い。滅多なことで弱音を吐いたり、泣く所なんて少なくてもアリアは見たことがなかった。
でもその強さはマリウスに支えられたものだった。支えを失った今の彼女は見ているのも辛くなるくらい痛々しい。
アリアはゆっくりとした足取りでフィアナの元に歩み寄った。肩に手を置いて抱き寄せる。
「大丈夫。大丈夫だから。落ち着いて私が傍にいるから」
アリアの腕の中でフィアナは泣いた。今まで我慢していたのを全て吐き出すように。それは魂からの悲痛な叫びだった。
気を使ってシェイトとレヴィウスの二人が病室を出る。フィアナが思い出すのは幼い頃、同じようにマリウスが目を覚まさなかった時があった。
今度はあの時のように目覚めないかもしれない。そう考えれば不安で押し潰されそうだった。
邪魔をしないように扉を閉めたシェイトとレヴィウスは廊下の壁にもたれ掛かり、他の患者の迷惑にならないように小声で話す。
「俺は養父に連絡を取ってみるよ。もしかしたらミゼルさんとも関係あるかもしれないし」
「りょーかい。俺はもう少しここに居て中に戻ることにするさ。二人の邪魔をしないように」
生徒に何かあった場合、保護者は引率であるクリスかユーウェインと言うことになる。話しではユーウェインは養父と共にいるだろうから養父に連絡を取った方がいいだろう。今日渡されたばかりのコネクト・ジュエルがこうも直ぐに役立つとは思いもしなかった。
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