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手掛かり、息子からの連絡
クリスは行き止まりになる壁に手を当て、目を閉じて思案していた。
目を閉じれば余計な雑念が消え、感覚が研ぎ澄まされるからだ。やはり感じる。普通とは違う僅かな魔力の歪みを。
違和感自体は昨日より増している気がするが……。

更に意識を集中させ、歪みの中心に針を通すようなイメージで自らの魔力と同調させて行く。それは正にクリス・ローゼンクロイツであるからこそ出来る神業。
……繋がった! きん、と渇いた金属音に似た音色が聞こえた。と言っても実際聞こえた訳ではない。あくまでクリスが捕らえたイメージである。

一気に流れ込んで来る膨大な魔力、そして……。だがあと僅かで感じられそうだった何かが強い力によって遮られた。
力の余波でクリスの身体が吹き飛ばされる。あまりに一瞬なことに防御も間に合わない。
だが後ろから添えられた手がクリスの身体を支えた。

「ご無事ですか?」

ラグナと共に連れて来たユーウェインである。異音を聞き付けたラグナもやって来る。

「ああ。すまないね」

同調に集中し過ぎるあまり防御が疎かになっていた。迂闊だったと自分を恥じるが、それよりもまず二人に話さなければ。
一瞬感じた強大な力。間違いなく悪魔、アスタロトのものだろう。やはり何か……ある。

「クリス様、一体何が?」

「魔力の歪みが見つけた昨日より僅かに増していたから同調してみたんだけど、弾かれたみたいだね。……アスタロトに。もう歪みも見当たらないよ」

肝心な何かは分からなかったが、あの魔力の波長は覚えがある。だが思い出せない。何だ? 僕は知っているはずだ。
考えかけた時、耳に付けたスピネルのピアスが誰かからの通信を伝えた。クリスはピアスを外して通信を繋いだ。

「はい」

『養父さん。邪魔して悪いけど急用なんだ』

宝石が映し出したのは息子、シェイトの姿。昨日彼から話を聞いたクリスが一応コネクト・ジュエルを持たせて置いたのだが。宝石越しの息子は心なしか顔色が悪かった。

「なんだい?」

『……マリウスが倒れたんだ』

予想しない一言にクリスは勿論、ラグナとユーウェインも絶句するしかなかった。



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あきゅろす。
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