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日だまりのように暖かいヒト
教戒はこの世界に置ける医療機関の殆どを担っている。それは魔法医療師の六割が聖職者だということもあるが、何より教皇自身が医療に力を入れているからだろう。ミゼルが入院した病院もその一つであり、彼女が倒れた理由も遠からず分かるだろうと思われていた……。


ミゼルが入院した病院は、医療施設いうより聖堂を思わせる作りになっている。ロビーの正面には十字架が掲げられており、天井にはステンドグラスが嵌められていた。
昨日ミゼルが倒れた直後はとても見ている暇はなかったが、色鮮やかな硝子は太陽の光を浴びて床に美しい絵画を描いている。

まだ朝早いというのにロビーは多くの患者で賑わっており、待ち合いに置かれている長椅子もほぼ全てが埋まっていた。
来る途中に買った花束を持ってアリアとシェイトは病室に向かった。

「すみません、先輩。わざわざ来て貰ってありがとうございます」

専門課程一年目の自分はまだしも二年であるシェイトには貴重な時間ではないのか。面倒見の良い彼のことだ。昨日のこともあって一緒に来てくれたのかもしれない。
きっとそうだ。でも……嬉しかった。
ミゼルさんが倒れた時に不謹慎だと自分でも思う。分からない。自分が理解出来(わから)ない。

「大丈夫。レポート、半分くらいは出来てるから。アリアが気にすることないよ。俺もミゼルさんの事心配だし」

思い出すのは義母、イヴリースのこと。最後の半年は衰弱が激しく、ベッドから起き上がることさえ出来なかった。ミゼルと共にイヴの最後を看取ったのもこの病院だったからどうしても思い出してしまう。
シェイトが隣にいてくれるから今はまだ考えずに済んだ。一人ではきっと立ち止まって、動けなくて、うずくまっていたに違いない。

「はい」

だからありがとうございます、先輩。日だまりのように暖かくて優しいヒト。



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あきゅろす。
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