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今は君の傍に
『そう、彼に会ったんだね。ならアルにも連絡は行っているだろう。いいね、シェイト。もしアスタロトに会っても戦おうなんて思っちゃ駄目だ。必ず逃げるんだ』

シェイトは戻った後、義父にアスタロトと出くわし、ハロルドに助けられたことを包み隠さず全てを話した。考えもなしに逆十字とおぼしき者を追い掛けたのには怒られたが、それはシェイトを心配してのことだ。
それともう一つ、クリスが語ったのは翠緑蝶が示した場所。何の偶然かそれは、シェイトたちがアスタロトと相対した場所だったのである。
だがクリスが昼間、路地裏に足を運んで調べた時は少し魔力の乱れがあるだけで何の異常もなかったという。

『とは言ってもそこまで詳しく調べた訳じゃない。取り合えず明日、というか今日だけどユーウェインと連絡が取れればラグナ君とも、もう一度調べてみるよ』

シェイトはクリスに出来るだけアリアと一緒にいるようにとも言われた。これについてはシェイトにも異論はない。ベランダで話したあの時、明らかにアリアの様子はおかしかった。彼女は悪夢を見たからだといっていたが、それだけはないだろう。
レヴィには悪いが適当な理由をつけてマリウスたちと一緒に行ってもらうことにした。かなりのブーイングだったのだが。

ロビーでアリアを待っていると案の定、彼女は一人で踊り場から出て来たのである。やはり顔色が少し悪い。

「アリア、ちょっといい? ……昨日、何かあったんじゃない?」

目の前のアリアが息を飲むのが分かった。フィアナやマリウスらとではなく、一人で出て来たことを考えるとやはり何かあったのか。

「……はい。実はミゼルさんが……倒れたんです。それで二人には悪いんですが、一人でお見舞いに行こうと思って」

もしかしたら彼女はアスタロトの事も考えて別行動を取ろうとしたのではないか。アリアの性格を考えると十分に有り得る。ミゼルはアリアの姉に等しい存在だと言っていたからさぞや動揺しただろう。

「俺も一緒に行っていいかな?」

純粋にアリアのことが心配だった。彼女は強くて……だけど弱い。自分の支えなど必要ないかもしれない。それでもシェイトは彼女の傍にいたいと思った。今のアリアは、幼き日の自分と同じだったから。



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あきゅろす。
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