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三日後のお楽しみ
「修理するのにどれくらい掛かる?」

アスタロトほどの悪魔を相手にする場合、バクルスは必要不可欠だ。ルチルに預けている間は当然、予備を借りる訳だが、これは本人認証が必要ない代わりに剣や槍などの武器を記憶する機能がない。
それだけではなく、退魔の力も比べものにならないという。

「三日よ。三日で直してみせるわ。ハロルドちゃん、その間は取り合えずこれを持って行って」

ハロルドの問いにルチルははっきり三日と示した。先に彼が言った通り、悪魔祓いに取って自らのバクルスを一時的にせよ失うのは致命的なことだ。
リフィリアにアスタロトが居たとなると時間を掛けている暇はない。悪魔が何をするつもりが無くともその存在だけで魔を呼ぶのだから。

ルチルは手にしたバクルスを十字架にするとチェーンを纏めてハロルドに手渡した。これはまだ試作品だがルチルが長らく研究してきた結晶であり、正に彼のためのバクルスなのである。

「少しだけ重いな」

「よく分かったわね。それには少しミーティア銀を混ぜてあるのよ」

流石はルチルが認めた悪魔祓い。見た目は同じなのに僅かな重さの違いに気付くとは。何故この試作品がハロルドのためかと言うと聖気の伝導率を高く設定してあるのだ。
他の悪魔祓いと同じではハロルドが全力を込めた場合、力に耐え切れずに砕けてしまう。あのミスリル銀でさえだ。

それを改善するためにこのバクルスはミーティア銀とミスリルの合金で作ってある。ミーティアは魔力伝導率がミスリルより良いものの、あまりに脆くそのままでは武器に使うことすら出来ない。

しかし性質が良く似たミスリルと合わせることで強度、魔力伝導率共に飛躍的に上昇するのだ。ただし問題もあり、ミスリルとミーティアの比率調整が非常に難しく、一つ間違えばバクルスの形にすらならない。

「なるほど。これなら申し分ないよ。夜遅くに押しかけて悪かったな。まさかオレもバクルスがああなるとは思わなかったし、動揺してたのかもねぇ。じゃ、また三日後に伺うよ。今度は昼にね」

「ええ、期待してていいわよ」

そりゃ楽しみだと笑うハロルドを見送ると踵を返し、今さっきまでいた工房に戻る。そうと決まれば寝ている暇もない。ルチルは真珠色の髪を簡単に纏め、作業台に向かった。



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あきゅろす。
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