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大切であるが故に
「……ミカエル様にお会になられたのですか?」

感慨深そうに笑うルシファーを見て、アゼルは何かに気付いたように問うた。

「何故そう思う?」

アゼルの言葉にも彼は飄々とした態度を崩さない。側近であるベルゼブルは口を挟むことなく側に控えている。
確かに他の者が見れば分からないだろう。しかし堕天する前、ルシファーに仕えていた自分やベルが見れば直ぐに分かる。

「見れば分かります。……ルシファー様は何故、ミカエル様に一言もおっしゃらなかったのですか?」

ルシファーが天使長をつとめていた時、ミカエルは一番彼に近い存在だった。
そんな彼に何故、何も言うことなく反旗を翻したのか。ルシファーはその理由をベルゼブルにすら語ることはなかった。

「……あいつが大切だからこそ同じ道を歩ませたくはなかった。あいつは闇の下よりも光の下が良く似合う。例え何と罵られようが構わない。私はどんな謗りでも受ける」

それはルシファーが初めて心情を吐露した瞬間だった。
出来るなら女神の御許でいつまでも共に居たかった。だがミカエルが大切であるが故にルシファーは彼の傍から去った。共に許されることのない深く暗い道を歩むよりも、光のもとで笑っていてほしかったから。

最も大切な存在であるミカエルの手によって堕天した。それが自分自身に課した罰にして完全にミカエルと決別するための布石。
だが実際会ってみて分かった。情けないが自分はまだ未練があるらしい。そう言って自嘲めいた笑みを作るルシファーにアゼルは何も言うことが出来なかった。



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あきゅろす。
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