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レヴィウスの受難
黄金色の髪の青年と別れ、図書室に戻って来たレヴィウスは自分が肝心なことを忘れていたことに気付いた。

「あれ、先輩? どうしたんですか?」

そして彼の前には今一番会いたくない相手マリウスがいる。常に微笑を湛える繊細な美貌からはもはや黒い何かが滲み出ていた。

「確かトイレに行って来るって言ってましたけど、今明らかに外から来ましたよね?」

ぎくぅ。完全にとんずらしようとしたのがばれてる。つい見知った顔に気を取られて戻って来たのは間抜けとしか言いようがない。
だが自分はこれでも貴族だ。少なくともマリウスに見破られる演技なら、セレスタイン家を継ぐ者としての器足り得ない。

「ちょっと中が混んでたから外の空気も吸って来ようと思って」

レヴィウスはそう言うと女生徒が見れば卒倒しそうな程にっこりと笑った。
我ながらかなり苦しい言い訳だが、今の自分はさながら蛇に睨まれた蛙状態。これでは誰も彼を責めはすまい。
しかしマリウスに笑顔が通じる訳もなく、嘘も笑顔も一発で見破られた。

「レヴィウス先輩、御託は良いですから戻りましょうか」

細身の体のどこにそんな力があるのかと言うくらいにむんずと首根っこを掴まれる。
ここにレヴィウスに憧れる女生徒たちが居なくて幸いだ。イメージが音を立てて崩れるだろうから。

「あの、今悲鳴が聞こえませんでした?」

フィアナの課題を手伝っていたアリアが顔を上げた。何か悲痛な叫びが聞こえた気が……。

「あー……多分レヴィの悲鳴だから気にしなくていいよ」

と隣のシェイトは苦笑しつつ窓の外を見つめた。結構気にした方が良いと思うのは自分だけだろうか。



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あきゅろす。
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