大人げない二人
「あのなぁ、人聞きの悪いこと言うなよ。少なくても魔術飛ばしてないだろ」
確かにレヴィの言う通り、寝起きが悪いのは自覚している。だが流石に魔術は使わない……はず。まったく覚えがない辺り、完全に否定出来ない所が悲しいが。
「あぁ!? どの口がそれを言うか!」
レヴィウスはシェイトの頬を掴むと思いきり引っ張った。
「ひょい、れふぃ! ひゃにすんや! ひゃめろ」
まるで子供の喧嘩のような光景は微笑ましくあるが非常に滑稽である。折角の美貌が台なしだ。
しかしやられてばかりいる彼ではない。シェイトも空いている手でレヴィウスの頬を抓った。
「ひぇめぇ、へいひょ、ひゃりひゃあっひゃ!」
何を言っているかさっぱり分かりません。いや、分かっているのは本人たちだけか。
呆然と見つめるアリアとフィアナを余所にシェイトとレヴィウスはまだそんなやり取りを続けている。
「お二人ともそれぐらいで止めてください」
マリウスが慣れた様子で止めに入るが、止まるどころかとうとう引っ張り合いに発展して行く。
「いいひゃへんにひろっ!」
「ひょりゃあおまひぇひゃろ!」
あ、なんか嫌な予感がする。マリウスの笑みがかなり怖い。あれは滅多に見られない黒い微笑だ。あれは相当怒ってるなぁ……。
しかも二人とも気付いてないし。これじゃあどっちが先輩か分かんないじゃない。
「先輩方、大人げないですよ。ねぇ」
それは見惚れるような笑みではあるが、時折垣間見える何かが背筋を凍らせる。
「「ひゃい?」」
マリウスの口から精霊の詩が紡がれるまで後数秒。
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