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勝負はこれから
『勝者、シェイト・オークス!』

 アナウンスと共に、割れんばかりの拍手と歓声が上がる。どさくさに紛れて、シェイトの名を呼ぶ女性徒の声が聞こえた。熱烈なファンも多いようだ。
 ただシェイトはそんな声を気にすること無く、軽やかに白亜の舞台を降りた。
 翌々周りを見回すと、先程シェイトが戦っていたものと同じ舞台が幾つも設置されている。

 今はちょうどクラス対抗試合の時期で、二日間に渡って開催される対抗試合は、まずクラスをA、B、C、Dのブロックで分け、勝ち残った一人がブロックの代表者となる。
 そしてAとBの代表者、CとDの代表者が戦い、勝った二人がクラスの代表と言うわけだ。

 シェイトの学年は二年。今彼が勝った事で2-Aの代表はシェイトともう一人に決まった。特にする事も無いが、休む気にはなれず、何気なく一年の会場へと向かう。


「……それではAブロック代表者とBブロック代表者、前へ」

 アナウンスに従い、歩み出たのは二人の少女。
 一人は愛らしい顔立ちに、澄んだ水を思わせる水色の髪を両側で縛った少女で、もう一人は金の髪に宝石を思わせる真紅の瞳を持った彼女。
 何処か浮き世離れした雰囲気を持つ美しい少女である。

「始め!」

『汝、邪風の暴君。牙持つ穢れし風の使徒。許されざる番人よ、我が喚び声に応え具現せよ! ストーム・ファング!』

『汝、翼の化身。気高き悠久の聖風。荘厳なる旋律を奏でし風王の僕よ。我が喚び声に応え具現せよ! エターナル・ウインド!』

 詠唱が終わるのはほぼ同時。水色の髪の少女が紡いだのは、風属性中級呪文、ストーム・ファング。
 対して金髪の少女は風属性中級呪文、エターナル・ウインドを発動させる。黒を帯びた風と金掛かった聖なる風がぶつかり合い、突風が吹き荒れた。

「流石です、アリアさん。勝負はこれからですね」

「どうかな?」

 各々の風は打ち消し合い消滅した。金髪の少女、アリアは悠然と水色の髪の少女――レティスに告げる。
 レティスが首を傾げた殺那、アリアを中心に金を帯びた風が同心円状に広がり、レティスを場外へと吹き飛ばす。

『勝者、アリア・ハイウェル!』

「あの子は……」

 シェイトの視界にはもうあの少女しか見えない。初めて見たはずなのにどこか懐かしく、忘れていた何かを思い出させてくれる。舞台から降りる金の髪の少女を、シェイトは見えなくなるまで見つめ続けた。



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あきゅろす。
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