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魔具点検
「コホン。それよりアリア、ピアスを見せてくれ。長らくメンテナンスしてなかっただろう」

ミゼルは場の雰囲気を一掃するように大袈裟に咳をする。
魔具というものは魔具職人が魔力を込めて作るものだ。宝石や鉱石は魔力伝導が良いため魔具作りに使われることが多い。実際魔導師たちは、好んで宝石を身に付ける。

魔具は、細心の注意を払って作られるのだが、いくら魔力が込められていてもいつかは劣化する。そのためにも定期的なメンテナンスは必要だ。

「少しだけなら《錬金科》のレティスに見てもらってたんですが」

そういってアリアは耳からピアスを外し、ミゼルに手渡した。
アリアの魔力を封じているピアスだが、付けていなくてもアリア本人からさほど離れなければ問題ない。勿論付けるのが一番良いのだが。

「……ふむ。特に異常は無いようだな。流石は師の作品か」

ノンフレームの眼鏡を掛け直しミゼルは、数十秒見つめた後判断を下した。

「ん? 少年のも見てやろうか」
言い終わる前に彼女は、シェイトの耳を引っ張った。

「い゙!」

意表をついた行動に思わず声がもれた。アリアもミゼルの突然の行動に目が点になっている。一分ほどしげしげと眺めた後、やっと耳を手放した。

「ほお……こちらも完璧だな。《金剛石》の名は伊達では無いという事か」

「あのですね。せめて一言ないんですか」

一人の世界に入っているミゼルに無駄だと思うが言ってみる。

「やはり……だな」

無駄だった。全然聞いてない。一応自分たちは視界に入っているようだが、本当に入っているだけだ。

「すみません、先輩。ミゼルさんは一回集中するとああなるんです」

魔具職人だけあり集中力は凄まじいのだろう。ミゼルの水色の瞳は未だ視点が合っていない。



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