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マイスター
「その年でマイスターと呼ばれるのは珍しいですよね」

普通マイスターというのは、熟達したそれもある程度年のいった職人が選ばれる。ミゼルのように二十代の者が選ばれるのは非常に稀だ。

「なにワタシなどまだ若輩の身さ。それに趣味でやっているようなものだし」

とミゼルは言うが、彼女が《瑠璃》の名で呼ばれるまで並々ならぬ苦労があったのだろう。
マイスターの称号は才能があるだけの者に与えられるものでは無い。

一握りの才能、惜しまぬ努力。どちらが欠けてもマイスターとは認められないのだ。

「いえ、それでも凄いことだと思います。義父はよく言っていましたから。『こと魔具作りに至っては、《瑠璃》の名を持つ彼女は、本当の天才だよ』と」


『僕の本業はあくまで魔導師だからね』

そう言ってクリスは笑っていた。とはいえ彼もまた魔具職人として非凡な才を持つのだが。

「私もそう思います。ミゼルさんは謙遜しすぎなんですよ」

彼女がここまで登り詰めたのは、けして才能だけの力だけでは無いことをアリアは知っている。自分は何年も見てきた。ミゼルは才能に傲ることなく、人の何倍もの努力を重ねてきたのだ。

「分かった分かった。降参だ。もう勘弁してくれ。ワタシは褒められることが一番苦手なんだ」

ミゼルは参ったとばかりに盛大な溜め息をついた。勿論それが照れ隠しであることは分かりきっているが。



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