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懐かしい人
シェイトを連れ脱兎のごとく駆け出したアリア。だが周りを見ていなかった事もあり、ここがどこだかさっぱり分からない。

「迷った……かな?」

「東門が直ぐ近くにあるからそんなに離れていなと思うけど」

シェイトが見上げた先には、重厚な作りの門が聳えたっている。シェイアードは、 教戒を中心として五つの区に分けられている。
中央区、東区、南区、西区、北区に分かれ、広さだけでいえば王都アージェンスタインにも劣らない。

「先輩は、シェイアードに来たことがあるんですか?」

「養父とね。とは言っても数えるほどだけどね」

自分の記憶が正しければクリスに連れ来て貰った二回だけ。少しくらいなら街の地図は頭に入っている。

「あの、さっきはすみませんでした。強引に連れ出したみたいで」

思わずレヴィウスの勢いにつられてやってしまった。

「あの場合は仕方ないよ。まったくレヴィの奴は……」

あいつの事だから二人を心配してやったとは思うが何分唐突すぎる。せめて一言いってくれても良いはずだ。

「もしかしてアリアか?」
その時、自らの名を呼ぶ懐かしい声がアリアの耳に届いた。

「こっちこっち」

恐らくは女性の声だろう。声の方を振り向くと、その人物はアリアのよく知る女性だった。

「ミゼルさん!」

道端に軒を連ねる店の一つ。銀や宝石のアクセサリが並べられている店の主人。

年齢は二十代後半ほどで、可愛いではなく、綺麗という言葉がぴったりな女性。鋭利さを感じさせる切れ長の双眸にノンフレームの眼鏡。
長い群青色の髪をゆるく三つ編みにし、背中に流している。服装はシンプルな銀の縁取りがされた紺の胴衣に同色のズボン。唯一の装飾といえば左耳につけたラピスラズリのピアスだけだ。


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