支える、と言うこと
「迷いは……晴れたの?」
マリウスを見ずにフィアナは、目の前の喧騒に目を向けながら尋ねる。
「……うん、といえば嘘になるけどもう大丈夫。僕は僕の信じた道を行くよ。父さんとも今は無理だけど一度ちゃんと話をしたいと思う」
僕は嫌だった。何も出来なかった自分自身が。その時思ったんだ。全てを救うことは出来なくても目の前で苦しむ命だけでも助けたいと。
だから父さん、まだ貴方には会えません。今貴方に会っても僕の思いを伝えられる自信がないんです。もう少しだけ待っていて下さい。
「そっか……マリウスの悩みを聞いてあげられたのが私じゃないことが少し悔しいけど」
やっぱり私じゃあダメなのかな……私じゃマリウスの支えになれないの? 気を抜けば涙が出そうで、堪えるように下を向く。
「フィア……ごめん。僕が弱いばかりに君を傷付けてしまって」
「謝らないで。あのね、マリウスはもっと人に頼っても良いと思うの。ううん、頼って欲しいの……私じゃマリウスの支えになれないの?」
我慢していた何かが堰を切って溢れた。紫水晶の瞳からこぼれ落ちた涙が頬を伝う。
「フィアは十分僕の支えになってくれてるよ。勿論、アリアさんもレヴィウス先輩もね」
だから涙を拭いて。マリウスは指でフィアナの涙を優しく掬う。もうこれ以上彼女を悲しませないように。
「本当に?」
今はフィアナは普段の彼女とは違い触れれば消えてしまいそうなほどに儚い。
「うん。だからフィア、ありがとう。僕はいつも君に助けられてばかりだね」
自分が少し不甲斐なく思えてマリウスは苦笑した。自分は確かにフィアナという存在に救われた。幼い頃、母を亡くした自分を励ましてくれたのも、共に魔導師になろうといってくれたのも彼女だ。
だから君という存在に感謝を。僕を支えてくれて本当にありがとう。
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