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ミシェル
金糸の刺繍が施された純白の聖衣を纏う青年は、マリウスの隣に腰掛けた。

「ミシェル様、この間はどうも。ラファエル様から教戒に居られる事は聞き及んでいましたが、直ぐにお会い出来るとは思いませんでした」

マリウスはそう言うと聖職者が行う最高礼をミシェルに贈る。

「私も驚きましたよ。治癒魔法の使い手がまさか貴方だとは」

ミシェルも柔らかな微笑を浮かべ、マリウスに礼を返す。彼もまたラファエルと同じように父の友人であり、幼い頃から面識がある。


物陰からフィアナを見守っていた三人だったが、中々マリウスが戻って来ない。

「もう五分は経ったと思うけど飲み物買いに行ったにしては長くないか?」

「そう言われればそうですね」

「じゃ、いっちょ視てみるか」

えっ? と聞き返す二人をしり目にハロルドは、精霊の詩を紡ぎ出す。

『其は全てを見通す慧眼……我が声に応え、数多の空間を越え、我が望みしものを我が眼(まなこ)に映し出せ。クレア・ヴォイアンス』

詩が完成すると同時にハロルドの琥珀の瞳が燐光を放ち、瞳孔が僅かに拡がる。

「無属性中級魔法、クレア・ヴォイアンスか」

「どんな効果なんでしょう?」

ロザリナはレヴィウスのように魔術を操る事が出来ないためさっぱり分からない。

「そうだな……簡単に言えば精霊因子と同調する事によって自らが望むものを文字通り“視る”事が出来る」
望むものとは言っても視認出来る距離は、術者の魔力に比例するため視れない場合もある。

「どうやらミシェル様と居るみたいだな」

暫く沈黙していたハロルドが口を開いた。その瞳はまだここでは無い遠くを見据えたままだ。

「ミシェル様?」

「猊下と謁見した時に後ろに居ただろ」

レヴィウスは思い出したようでああ、と相槌を打った。

「そのミシェル様ってやっぱり偉いのか?」

ハロルドも様付けをしているし、教皇猊下の後ろに控えていたくらいだ。

「“上”では偉いんだよ」
とハロルドは冗談めかして微笑んだ。



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