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君が見たもの
ラクレイン王国、王都アージェンスタイン。
王都の端に位置する小高い丘の上にクロノ共同墓地はあった。
緑鮮やかな芝生に、見渡す程の白い墓石が同じ感覚で並んでいる。丘の上にあるだけあり、涼やかな風が訪れる者の頬を撫でる。

まるで死者を悼むかのように、生者を慰めるように無数の白き花が揺れていた。今日も共同墓地を訪れる者は居ない――ただ一人を覗いては。

静寂に包まれた墓地内に一人の青年の姿がある。夏だというのに裾の長い漆黒のローブを纏いながらも青年の顔には汗一つ浮かんでいない。
ある墓石の前で佇む彼――クリスは、風が吹く度に流れる灰色の髪を押さえながら、ここにはいない友に語り掛ける。

「また来ちゃったよ。この間来たばかりなんだけどね」

この間、約一週間前の彼の命日に訪れたばかりだ。何故自分が彼のもとを訪れたのか。明確な理由はない。ただ何となくともいえるかもしれない。

思えばあの日から僕たちの運命は変わってしまった。そう、君が死んでから僕もリデルもアルも以前のままではいられなかった。

「ねぇ、アンリ。僕は嫌な予感がしてならないんだ。世界は変わり始めている、そうは思わないかい?」

それはクリスがずっと感じていた疑問だ。小さな歯車が噛み合わない違和感。僅かな、だが決定的な変化。
彼は、アンリはいつも微笑み未来を見据えていた。

『君はその瞳で一体何を見て居たんだい?』

クリスは右目に付けている片眼鏡を外し、雲一つ無い空を仰ぎ見た。アンリが見ていた何かを見るように。



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