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複雑な気持ち
視界一杯に映ったのは白いシーツだった。
アリアは顔を上げ、寝惚け眼で辺りを見回した。微かに香る消毒液の匂い、白で統一された清潔感ある部屋だ。

「ごめん、起こしちゃったかな?」

ベッドから半身を起こした青灰色の髪の青年――シェイトは申し訳無さげに微笑み掛けた。

へ? ここは何処だろう? ……シェイト先輩が居る。
尚も呆けた表情のアリアにシェイトは目の前で手を振ってみる。

「ひゃ、はいっ!」

その行為でアリアは夢から現に引き戻された。思わずすっとんきょうな声が出る。
楽しそうにクスクスと笑う先輩の姿が見えた。

「ごめん、ごめん」

目尻に浮かんだ涙を拭うシェイトの具合は、心なしか自分が転た寝する前より良くなっている。青白かった肌にも僅かながら朱が差し、顔色も良い。
よかった、本当によかった……何だろう? この気持ちが“なに”なのかは分からない。

先輩の事は好き。魔導師としても尊敬している。

でもそれは多分“恋”ではない。第一そんな感情を抱くにはまだ短すぎる。
懐かしさ、又は既視感。先輩と一緒にいると安心出来る。

『私は何をしたいんだろう……?』

分からない。幾ら問うても答えは出ない。

「アリア?」

先輩がいつの間にか俯いていた私の顔を覗き込む。綺麗な顔が至近距離で目に入り、アリアは思わず思いきり顔を上げた。

「す、すみません。ぼっーとしちゃって」

……先輩、もう少しだけ貴方の傍に居ていいですか?
それが例え、かりそめのものでしか無いとしても今は少しだけ貴方の傍に居させて下さい。



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