まだまだ子供 『それじゃあ、私はもう行くわね。こう見えても忙しいんだから』 また一回転したクラウディアの姿は、一四歳ほどの少女に戻っていた。 鎧とローブを合わせたような不思議な衣装も消え、今は薄緑の布を纏っているだけだ。 「ありがとう、クラウ」 「ありがとうございました」 クリスはのほほんと、シェイトは丁寧に礼を言う。 『そうね、もし私の力が欲しい時は私の名を喚びなさい。そうすれば応えてあげる。“妖精の女王”クラウディアの名にかけて』 妖精の女王は、悪戯っぽい笑みをシェイトに向けた。 クラウディアの姿はゆっくりと薄れ、幻想的な光の粒子となるとやがて消えた。 「どうやらシェイトは気に入られたみたいだね」 「そう……なのか?」 クリスが言うにはクラウディアはシェイトを気に入ったらしい。 たった二言、三言言葉を交わしただけなのだが。 「彼女が人を気に入るなんて珍しいんだよ?」 そう、妖精の女王たる彼女が今まで人の召喚に応えたのはただ一人。クリス・ローゼンクロイツのみ。 「僕もそろそろおいとましようかな。いいかい、さっきも言ったけど無理は禁物だよ」 それは幼い子供に向けるようで、シェイトは密かに苦笑した。きっと彼に取って自分は、いつまで経っても手の掛かる子供なのだろう。 「分かってる。ありがとう」 シェイトの答えに満足したのかクリスは、静かに微笑み、その場を去った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |